特措法の認定基準に疑問符 対象外の原告救済―大阪地裁・水俣病訴訟
2023年09月28日08時21分
水俣病特別措置法に基づく救済を巡り、大阪地裁は居住地域や年代が認定基準から外れていた原告を含め全員を「水俣病」と認めた。国が最終解決を図った特措法だったが、基準の妥当性に疑問符が付いた形だ。環境省は「予想外の厳しい判決」(幹部)としており、今後の東京、新潟、熊本各地裁の判断次第では、国は難しい対応を迫られそうだ。
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特措法は「最終解決を図る」として2009年に議員立法で成立。条文には「問題の解決は、救済を受けるべき人々があたう(できる)限りすべて救済されることを旨として行われなければならない」とうたい、被害者全員を救済する姿勢を示した。
救済対象の地域や年代は、別の訴訟で10年に熊本地裁が出した和解案を参考に、国が関係団体と協議して決定した。対象から外れても、証拠があれば認定するとしたが、当事者からは「誰が40年前に魚を買った領収書を取っておくのか」との声が出るなど、ハードルの高さが指摘されていた。
大阪地裁判決では、地域や年代が外れていても、八代海で取れた魚介類を継続的に食べていた患者は「水俣病を発症し得る程度にメチル水銀を摂取したと推認するのが合理的だ」とした。
判決後の記者会見で、徳井義幸弁護団長は「今までの水俣病行政が間違っていたと全面的に判断されたのだから、被害者のための政策に転換してほしい」と訴えた。