AI採点、初めて全種目で 誤審防止にも期待―世界体操
2023年09月27日16時53分
【アントワープ(ベルギー)時事】30日に開幕する体操の世界選手権(ベルギー・アントワープ)で、人工知能(AI)による採点システムが初めて男女の全10種目で導入される。
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国際体操連盟(FIG)と富士通が7年ほど前から共同で開発し、2019年世界選手権から一部種目で正式導入された。選手の動きを多方向からビデオカメラで撮影して3Dデータに変換し、AIは関節や骨格の位置を認識して実施した技を判別する。体操は技の難度を示すDスコアと出来栄えを示すEスコアの合計点で争われるが、現状ではDスコアの審判補助としてのみ活用される。
ここまでの道のりは苦労の連続だった。プロジェクトを統括する富士通の藤原英則さんは「世界初の試みは誰よりも先に壁にぶち当たる。その壁を乗り越えるためには新しい技術やアイデアが必要で、120件以上の特許を出願した」と言う。
体操の技は1300以上。開発班は「男子は475種類、女子は318種類の要素の組み合わせでできている」と基本動作を解析し、AIに学習させた。大会を重ねるごとに精度を上げて判別できる種目を増やし、今回は男子平行棒と男女のゆかで初めて使われる。
誤審の防止策としても期待される。また、ライブ映像に組み込めれば、視聴者が演技の微妙な違いや複雑な技を理解しやすくなる可能性もある。
FIGの渡辺守成会長が富士通側に話を持ち込んだことが、システム開発のきっかけになった。医療と連携し運動機能向上などで一般社会の健康増進にも役立てたい思いがあり、藤原さんは「体操を通じて世界中の人々に健康で豊かな生活を送ってもらいたい」と夢を語った。