原告全員を水俣病認定 救済漏れ、国などに賠償命令―特措法対象外でも罹患・大阪地裁
2023年09月27日19時02分
居住地域などによる線引きで、水俣病特別措置法の救済対象とならなかったのは不当だとして、熊本、鹿児島両県出身の128人が国と熊本県、原因企業のチッソを相手取り、慰謝料など1人当たり450万円の損害賠償を求めた集団訴訟の判決が27日、大阪地裁であった。達野ゆき裁判長は原告全員を水俣病と認定し、1人当たり275万円の支払いを命じた。
同種訴訟は東京、新潟、熊本各地裁でも争われており、判決は初めて。原告は計約1800人で、国は新たな救済策など対応を迫られる可能性がある。
訴訟は、原告がメチル水銀に汚染された八代海の魚介類を食べて水俣病にかかったかどうかや、居住地域や年代で救済対象を線引きする特措法の妥当性などが争点だった。
達野裁判長は「対象地域外でも八代海で取れた魚介類を継続的に多食したと認められる場合には、水俣病を発症し得る程度にメチル水銀を摂取したと推認するのが合理的だ」と指摘。原告らの症状は他の原因で説明できないとし、全員が水俣病に罹患(りかん)していると判断した。
特措法はチッソが排出をやめた翌年の1969年以降の居住者を対象外としたが、達野裁判長は水俣湾の仕切り網が設置された74年1月までに魚介類を多く食べた人について因果関係を認めた。