危ぶまれるゴーストタウン化、事業主の中国不動産大手が経営難 マレーシア
2023年09月25日15時49分
【フォレストシティーAFP=時事】マレーシア南部ジョホール州の人工島での都市開発プロジェクトは、中国不動産開発大手、碧桂園が手掛ける総事業費1000億米ドル(約14兆8000億円)の巨大事業だ。しかし今、本土と島を結ぶ橋は一部崩落しており、コンドミニアムや店舗が入る高層ビルは空室が目立っている。(写真は、中国・碧桂園が手掛けるマレーシアの大規模都市開発プロジェクト「フォレストシティー」のタワーマンション群)
開発区は「フォレストシティー」と呼ばれ、中国の中間層に狙いを定めた物件をそろえていた。だが、売れ行きは低調で、中国による外貨管理、新型コロナウイルス禍に伴う経済活動の停止、中国の影響増大に対する国内での反発といった事態に直面。
さらにここにきて、碧桂園自体の資金繰り悪化を受け、雲行きが一段と怪しくなってきた。同社は現在、1960億米ドル(約29兆円)相当の債務を抱え込む。
碧桂園は今年1~6月期に、半期として過去最大の赤字を計上したと発表。主要な債券について債権者に償還期限延長をのんでもらうなどして、辛うじてデフォルト(債務不履行)を回避している状態だ。
フォレストシティーの2万6000件に及ぶ物件の中から、5年前に約43万ドル(約6350万円)相当の物件を購入した中国河南省出身のジャオ・ボジアンさん(29)は、「碧桂園は資金繰り難を克服できると期待している」と語る。
「人が集まらなければ、フォレストシティーで商売ができなくなる」
対岸はきらびやかな都市国家シンガポール。ここフォレストシティーは、碧桂園を高みへと押し上げた野心的な賭けの一つだった。しかし今や、厳しい現実が突き付けられようとしている。
フォレストシティーは中国主導の巨大経済圏構想「一帯一路」の下、マレーシアのスルタン(イスラム王侯)も一部出資する運営会社によって手掛けられた。最終的には70万人を呼び込みたい考えだが、現在、住民は9000人にとどまっている。
島では建設作業員の数が日ごとに減っていき、4車線の自動車道は夜になると不気味な静寂に包まれる。
20棟を超える高層ビルが立ち並ぶが、夕刻、明かりがともる窓はまばらだ。
地上階はシャッター街化している。滞納金の支払いを督促する裁判所文書がドアに貼られたままの店舗もある。そんな店内の床にはごみが散らばっている。
■金融特区構想
警備員はAFPに、この人工島に居住している購入者は多くないと語った。資産として物件を所有しているのだという。
これまでの政権は、フォレストシティーは外国人向けだと批判し、非居住者が投資物件として購入することに反対してきた。
しかし、アンワル・イブラヒム現首相は、お荷物になってしまいかねないとして支援に乗り出した。
アンワル氏はこのほど、フォレストシティーを「金融特区」に指定し、特別所得税や数次有効ビザといった特典を導入する方針を発表したのだ。
関係者はそれでも、前途は多難だと言う。
■ゴーストタウン
首都クアラルンプールから車で3時間かけ、人々はこの近未来都市を見学したり、免税店でアルコールを購入したりするためにやって来る。
シンガポール在住の技師、デニシュ・ラジ・ラビンダランさん(32)は、「ここには皆、アルコールを買いに来る」と話す。
「私も長居はしない。ゴーストタウンだ。道路は暗くて危険だし、信号もない」
活動しているのは大半が外国人労働者だ。ネパールやバングラデシュ出身者が多い。雑草刈りや道路の清掃、ビルの警備などに従事している。
ビール缶が散らばる人工砂浜では、何組かの家族がココナツの木の下でピクニックをしていた。泳ぎたいと思う人に向け、「クロコダイルに注意」と書かれた看板が立てられている。
関係者によれば、ある45階建てのビルは、二つのフロアしか埋まっていない。残りは販売中だ。
「ティックトックの投稿動画を見て休みを利用して来た」というマラッカ州の小売店店員、ヌルシジワ・ザムリさん(30)は、「ここに住みたいかと聞かれれば、答えはノーだ」と話した。【翻訳編集AFPBBNews】
〔AFP=時事〕