芸備、筑肥線で協議要請見込み ローカル線再編へ鉄道会社―交通再生法施行で都道府県調査・時事通信
2023年09月25日20時30分
経営が厳しいローカル鉄道の再編について、時事通信は8月下旬~9月中旬、47都道府県を対象にアンケートを実施した。存廃を含めて話し合う「再構築協議会」の設置を事業者が要請する見込みの線区があるか尋ねたところ、JR芸備線の備中神代(岡山県)―備後庄原(広島県)間と、JR筑肥線の唐津(佐賀県)―伊万里(同)間の二つが挙がった。
再構築協議会は、改正地域公共交通活性化再生法(10月1日施行)に基づき、自治体や鉄道事業者の要請に応じて国が設ける。主に1キロ当たりの1日平均利用者数(輸送密度)が「1000人未満」の線区について、「鉄道の維持」か「バスへの転換」といった再編方針を話し合って決める。
芸備線を巡ってはJR西日本が10月中に設置を要請する意向を示しており、岡山、広島両県ともに沿線自治体と相談した上で対応を決めると回答。佐賀県は筑肥線について、「JRの出方を見て対応を検討する」(担当者)と動向を注視する。
アンケートで、自治体側から協議会設置を求める予定があるか聞いたところ、いずれも「ない」と答えた。事業者が要請した場合の対応では、埼玉、神奈川、愛知、山口、香川の5県が「応じる」とする一方、秋田、長野両県は「応じない」と回答。39都道府県は「その他」を選び、廃線を前提としない条件付きで応じる考えなどを示した。沖縄は県内に鉄道事業者がいないとして、すべての質問に無回答だった。
既に任意の協議会などを設け、鉄道再編に関する議論を進めている自治体もある。千葉県はJR久留里線の久留里―上総亀山間の在り方を関係者間で検討するため、5月に協議を開始。今後、路線のニーズを確かめる住民調査も行う。豪雨災害で不通となっているJR津軽線の蟹田(青森県)―三厩(同)間、JR肥薩線の八代(熊本県)―人吉(同)間などでも、沿線自治体や事業者が協議を続けている。
協議を経て鉄道の在り方を見直した事例も尋ねた。福島県では2011年の豪雨で不通となったJR只見線の会津川口―只見間について復旧方法を議論。住民が鉄路の復旧を要望する中、最終的に自治体が線路などの施設を保有し、事業者が運行する「上下分離方式」とすることで合意し、22年10月から全線再開した。
滋賀県の近江鉄道も、24年度から全線(59.5キロ)を上下分離方式で運営することで、沿線自治体と鉄道事業者が合意。一方、島根県江津市と広島県三次市を結んでいたJR三江線(108.1キロ)は議論の末、全区間の鉄道存続を断念。18年に廃線にし、代替交通としてバスを運行している。