神戸5人殺傷、二審も無罪 心神喪失状態―大阪高裁
2023年09月25日12時42分
神戸市北区で2017年7月、祖父母や近隣住民ら5人を殺傷したとして、殺人などの罪に問われた男性被告(32)の控訴審判決が25日、大阪高裁であった。坪井祐子裁判長は、事件当時心神喪失状態だった疑いがあるとして無罪(求刑無期懲役)を言い渡した一審神戸地裁の裁判員裁判判決を支持し、検察側控訴を棄却した。
被告は「殺害した相手を『哲学的ゾンビ』と思っていた」と供述し、刑事責任能力の程度が争点だった。起訴前に精神鑑定した2人の医師の意見は割れており、1人は妄想型統合失調症と診断し、人を殺害している認識はなかったと判断。もう1人は「妄想は確信的ではなく、思いとどまることもできた」と指摘した。
控訴審では2人の医師の証人尋問を実施した。坪井裁判長は、一審同様に「被告が妄想を確信していた疑いは払拭できない」とした上で、「一審判決の責任能力の判断に不合理な点はない」と結論付けた。
被告は17年7月16日朝、神戸市北区の自宅やその周辺で、祖父母=いずれも当時(83)=と近所の女性=当時(79)=を包丁で突き刺すなどして殺害。母親ら2人も殺害しようとしたとして起訴された。
亡くなった女性の遺族は判決後、代理人を通じて「妄想を抱いていたとしても、人を殺して罰せられない理由が分からない。一般の人も納得できるような法律に変えていくきっかけにしてほしい」などとするコメントを出した。