米下院、予算案巡り混迷 トランプ氏が共和議員に圧力―月末に「政府閉鎖」期限
2023年09月23日07時15分
【ワシントン時事】米下院で多数派を握る共和党の内紛により、来年度予算案を巡る混迷が深まっている。2023会計年度末が30日に迫る中、大幅な歳出削減を求める強硬派が執行部と対立し、本予算はおろか政府機関の一部閉鎖を避けるためのつなぎ予算さえ成立の見通しが立たない。強硬派の背後では、来年の大統領選で返り咲きを目指すトランプ前大統領が隠然と力を振るう。
「共和党議員は、悪徳バイデン(大統領)率いる政府の予算を否定しなければならない」。トランプ氏は20日、SNSへの投稿で共和党議員に圧力をかけた。同氏は20年大統領選の結果を覆そうとした事件など4件で刑事訴追されており、予算成立阻止が「私に対する政治的訴追の資金を止める最後のチャンスだ」とたたみかけた。
トランプ氏は共和党の大統領候補者指名争いで他候補と支持の差を広げ、独走状態にある。これにトランプ氏に近い下院強硬派も勢いづき、マッカーシー下院議長ら執行部が民主党側と妥協すれば、議長解任動議の提出も辞さない構えだ。下院は大統領選と同時に行われる選挙で全議席が改選されるため、議員らは保守層に影響力を持つトランプ氏の意向を無視できないという事情もある。
強硬派はロシアの侵攻を受けるウクライナへの追加支援に関しても、懐疑論を唱えるトランプ氏に同調。21日に連邦議会を訪れたウクライナのゼレンスキー大統領は、与野党執行部との会談で「支援がなければ戦争に負ける」と切実に訴えたが、同じ日に下院は強硬派の反対で、ウクライナ支援を含む来年度国防予算案の採決手続きに失敗した。米メディアによると、ゼレンスキー氏は議会演説を希望したが、共和党が拒否した。
共和党の混乱は、与党・民主党にとっても対岸の火事ではない。政府閉鎖に陥り国民生活に不利益が生じれば、民主党やバイデン氏も批判の対象となるためで、米メディアは「それこそがトランプ氏の狙い」と解説する。下院共和党執行部は強硬派との協議を続けるが、政府閉鎖は避けられないとの見方が強まっている。