処理水が影、「台湾」で緊張続く 北朝鮮は5年ぶり復帰―中国・杭州でアジア大会、23日開幕
2023年09月22日07時03分
【杭州時事】中国・杭州で23日、アジア大会が開幕する。スポーツを通じた平和や親善が理念に掲げられる中、東京電力福島第1原発の処理水放出が日中関係に影を落とし、中台間の緊張も続く。北朝鮮は、5年ぶりに国際総合大会に復帰。ロシアへの接近を鮮明にしているが、中国との距離感に注目が集まる。シリアのアサド大統領も訪中し、習近平国家主席と会談する。
処理水放出への反発が根強い中国では、放出直後、日本人学校に石や卵が投げ込まれる事件が起きた。日本の外務省は15日、アジア大会開催に伴う注意喚起を発出。日本関係機関への嫌がらせ行為があったとして、「注意が必要」と警告した。
20日には、湖北省武漢市で行われたサッカーのアジア・チャンピオンズリーグ(ACL)浦和レッズの試合で、中国側サポーターが「海が泣いている」と書かれた巨大な横断幕を掲げた。処理水に絡む抗議とみられ、一部で反日感情が高まっている現状が改めて示された。
アジア大会では、中国が「核心的利益の中の核心」とする台湾の位置付けも焦点だ。「一つの中国」原則を掲げる中国は、台湾を「地域」として扱うよう対外的に求めており、国際大会でも「チャイニーズ・タイペイ」という呼称が使用される。開幕に先立ちX(旧ツイッター)では、「台湾」が国家として表記されている競技案内資料の写真が拡散。台湾メディアも報じ、話題となった。
台湾当局は18日、台湾周辺で中国の軍用機延べ103機の活動を確認したと発表。中国は台湾の民進党政権への軍事的圧力を高めつつ、来年1月の台湾総統選をにらみ、親中世論の形成にも力を入れる。中国政府で台湾政策を担う国務院台湾事務弁公室は13日、台湾選手の参加を歓迎し、「杭州の風土を感じてほしい」と呼び掛けた。
北朝鮮は、2018年にインドネシアで開かれたアジア大会以来の総合的国際スポーツの祭典への復帰となる。過去には五輪やアジア大会を外交の舞台として活用しており、今回も中国との関係強化を図る見通し。
ただ、金正恩朝鮮労働党総書記は最近ロシアを訪れ、プーチン大統領と会談。軍事協力についても協議したとみられ、中国としては一定の距離を置きたいのが本音だ。朝鮮中央通信は21日、金日国体育相を中国に派遣したと伝えたが、北朝鮮がこのほかの要人を送るかが注目される。
国営新華社通信によれば、アサド大統領は21日午後、杭州市に到着した。同氏の中国訪問は11年の内戦勃発後初めてとされ、中国との経済的結び付きを強化する狙いがありそうだ。