人的被害の全容把握困難 死亡・不明1万3000人―警報なく被害拡大・リビア洪水1週間
2023年09月17日20時29分
【イスタンブール時事】リビア東部が暴風雨に見舞われ、ダム決壊などによる大規模な洪水が発生してから17日で1週間。世界保健機関(WHO)によると、16日までに約4000人の遺体が収容され、約9000人が行方不明になっている。リビア赤新月社(赤十字に相当)は、死者が1万1000人超に上ると推定。被災地では身元不明の遺体を現場の判断で埋葬する動きも進んでおり、人的被害の全容把握は困難だ。
リビアは2011年以降の内戦で国土が荒廃。災害時の早期警報システムが、満足に整備されていなかったとみられる。世界気象機関(WMO)のターラス事務局長は「警報があれば、事前の避難によって多くの犠牲を防げていただろう」と指摘している。
現地からの報道によると、被害が集中した人口約10万人の都市デルナでは10日、暴風雨で市内を流れる川の上流に位置する二つのダムが決壊した。最大で高さ7メートルに達する水流が多くの建物を押し流し、2200棟以上が冠水。市街地の30%が、がれきと化すなどして消失した。
がれきの除去に加え、陸上や海に放置された多くの遺体の収容に必要な人員や機材が不足。30度前後の暑さが続く中、感染症拡大などを恐れる住民が次々と集団墓地に遺体を埋葬している。病院での遺体確認作業の混乱もあり、死者数に関する情報は錯綜(さくそう)している。
国連機関の情報では、デルナを含む東部一帯の被災者は約90万人。3万8000人以上が避難生活を余儀なくされ、「病気を拡散させるリスクは、遺体よりも生存者の方が高い」(WHO)と指摘される。国連児童基金(ユニセフ)は、影響を受けた子供も30万人近くに上ると指摘し、清潔な水や衛生環境を整備するとともに、心理面でもサポートする必要性を訴えている。