スペクタクルとテーマ性 市川猿翁さんの「スーパー歌舞伎」
2023年09月16日13時32分
新しい歌舞伎の創造に情熱を注いだ市川猿翁さんは、代表作となった「スーパー歌舞伎」を計9作生み出した。
第1作「ヤマトタケル」は古事記が題材。哲学者の梅原猛さんに「シェークスピアのような哲学的なせりふと、ワーグナーのオペラのような壮大なスケールの作品を」と脚本の執筆を依頼。舞台化に当たり、明治以降に作られた新歌舞伎は本来の面白さである歌(音楽性)と舞(視覚性)に欠け、伎(演技)に偏っていると考えていた猿翁さんは、踊りや立ち回りなどの古典歌舞伎の要素と、テーマ性のある物語が持つスペクタクル性を存分に盛り込んだ。
1986年に初演されて人気を呼び、その後も再演を重ねた。猿翁さんが病に倒れてからは、主人公のヤマトタケル役を市川右近(現・右団次)さんらが受け継ぎ、2008年に観客動員が累計100万人を達成した。
並行して新作を作り、2作目は京劇と歌舞伎のコラボレーションとして話題を集めた「リュウオー」(89年)。その後も「オグリ」(91年)、「八犬伝」(93年)、「新・三国志」(99年)など多彩な作品が続いた。
来年2~3月には東京・新橋演舞場での久々の上演も決まっていた。