AI規制へ議論本格化 大統領選控え危機感―米議会
2023年09月15日06時39分
【ワシントン時事】米議会で人工知能(AI)の法規制を巡る議論が本格的に始まった。文章や動画を生み出す生成AIが急速に普及する中、偽情報拡散などへの懸念が台頭。ロシアや中国などが悪用すれば、「安全保障を脅かす」(民主党上院トップのシューマー院内総務)との危機感が背景にある。来年の大統領選を控え、法整備を進めたい考えだが、規制への警戒感も根強い。
米政権、新たに8社と取り決め 規制議論も本格化へ―AI安全巡り
上院は13日、電気自動車(EV)大手テスラのマスク最高経営責任者(CEO)、メタ(旧フェイスブック)のザッカーバーグCEO、マイクロソフト共同創業者のビル・ゲイツ氏ら米IT業界の大物を招き、意見を聴取。法規制への「強い同意」(マスク氏)が示されたという。
シューマー氏らは6月、説明責任や透明性確保などを柱にした法規制案の骨格を超党派で発表した。別の民主党上院議員は、監督機関新設や免許制導入、AI生成の動画や画像には透かしを入れて明示することを義務付けるなどの法規制案の概要を公表した。
議論本格化の背景には、約1年後に迫った大統領選がある。今年4月、野党共和党がAIを使った政治広告動画を公表。民主党のバイデン大統領の再選後、麻薬がはびこり、戦争が勃発するとの精巧な「未来図」を描き、話題になった。今年に入り、AIを利用して作られた偽の動画や音声がSNS上で急増しているとの指摘もある。
ロイター通信によると、シューマー氏は13日の上院特別会議で「大統領選より前に速やかに手を打つ必要性を話し合った」と説明した。他の議員からは、他国による選挙妨害やインフラ攻撃への悪用を防ぐため、安全対策を求める声が上がった。
バイデン政権は、AI開発を手がける有力企業15社との間で、安全性確保に関する取り決めを交わした。一方で、共和党内では「まだ法案を作成する段階にはない」(上院議員)などとする慎重意見もあり、法整備の行方は見通せないままだ。