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「三頭政治」変化の兆し 岸田首相、茂木氏に不信感―年内の衆院解散に両論

2023年09月13日21時33分

記者会見する岸田文雄首相=13日午後、首相官邸

記者会見する岸田文雄首相=13日午後、首相官邸

  • 自民党の臨時総務会に臨む岸田文雄首相(左)と茂木敏充幹事長=13日、東京・永田町の同党本部
  • 自民党役員会を終え、記者会見する自民党新四役の(左から)萩生田光一政調会長、茂木敏充幹事長、小渕優子選対委員長、森山裕総務会長=13日午前、東京・永田町の同党本部
  • 記者会見で政治資金問題に関する質問を受け、厳しい表情を見せる自民党の小渕優子選対委員長=13日、東京・永田町の同党本部

 13日の内閣改造・自民党役員人事で、岸田文雄政権の権力構造に変化が見え始めた。「三頭政治」と称された岸田首相と茂木敏充幹事長の関係に不信感が芽生え、幹事長交代論も一時浮上。首相は来年秋の党総裁選での再選に向け、最大派閥・安倍派への傾斜を強めた。今後の政局の焦点は、首相が年内の衆院解散・総選挙に踏み切るかどうか。新たな布陣を国民がどう評価するかや、経済対策の内容や国会対応が判断を占う材料となる。

自民・茂木幹事長「政権支える」 岸田首相と距離、払拭アピール

 ◇2度の会談
 11日午前11時すぎ、首相公邸に向かう裏門に黒塗りセダン車が入った。後席にいたのは、安倍派有力議員の萩生田光一政調会長だった。
 首相は同日朝、インドから帰国したばかり。人事調整で真っ先に萩生田氏と30分余り協議し、午後には党本部でも再び約40分話し合った。
 今回の人事で注目されたのは茂木氏の処遇だった。茂木氏は宰相への野心を隠さず、官邸側との調整がない「突出」が目立っていた。1月の通常国会の代表質問で「児童手当の所得制限撤廃」を表明、最近も秋の補正予算編成を主張した。首相は周囲に「どうなっているんだ」といらだちを見せた。

 首相は就任以来、麻生太郎副総裁、茂木氏との連携を重視。定期的に党本部で相談し、政権の重要方針を決めてきた。岸田派が第4派閥にすぎず、政権運営のため第2派閥の麻生派、第3派閥の茂木派の協力が欠かせなかった。それを古代ローマの有力者3人による政治体制になぞらえて「三頭政治」と表現したのは茂木氏だった。
 「続投と交代、どちらがいいのか」。首相は今夏以降、茂木氏の留任の可否を悩んでいた。麻生氏は「仕事ぶりで交代させるべき点がありましたか」と続投を求め、首相は結局受け入れた。
 一方で萩生田氏、松野博一官房長官ら安倍派有力者「5人衆」が全て閣僚・党幹部に留任。最側近だった岸田派の木原誠二氏が週刊文春報道で官房副長官退任を余儀なくされ、官邸中枢の意思決定プロセスも変わるとみられる。政権安定へ最大派閥を引き寄せ、総裁再選への流れを強めたい首相の思惑がにじむ。
 党選対委員長には、茂木派に所属し派内で首相候補に推す声もある小渕優子氏を起用。首相が安倍派に配慮を示したのとは対照的に、茂木氏へのけん制とみる向きも強い。茂木氏は13日の記者会見で総裁選への対応を問われると「政権をしっかり支えていきたい」と語った。だが、2人に生じた疑心暗鬼は簡単には消えそうにない。
 ◇「ドリル」火種に
 女性閣僚を過去最多に並ぶ5人に増員したのは「刷新感」を打ち出すためだった。一方、目玉人事となった小渕氏は、就任初日の記者会見で早速、過去の政治資金問題で「洗礼」を受けた。
 小渕氏は涙をこらえながら「おわびしたい」と陳謝。しかし、2014年に発覚したこの問題では関係データの入るハードディスクがドリルで破壊されていたことが判明。説明はなお不十分とされ、政権の火種となりそうだ。
 解散時期の見方は自民内で交錯する。党幹部は「なお首相は年内解散を諦めていない」と説明。党関係者は「党内固めを優先した陣容だ。解散は来年秋の総裁選後だろう」と慎重だ。
 政府・与党は臨時国会を10月16日に召集する案を軸に検討する。物価高対策などを盛り込んだ経済対策を策定し、財源の裏付けとなる補正予算を編成する方針。この国会での成立を目指せば年内の政治日程は相当窮屈になる。ただ「経済対策を策定するだけで解散することも可能だ」(経済官庁関係者)との見方もある。
 低迷する内閣支持率の向上も、衆院解散を行う必要条件だ。21年9月、当時の菅義偉首相が総裁選出馬を断念したのも、低支持率の中で解散を模索したことが明らかになり、党内で反発を受けたためだ。岸田首相が「解散カード」をどう駆使するのか。世論や党内情勢も見極めて慎重に判断するとみられる。

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