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強まる途上国の存在感 機能不全脱却へ正念場―G20サミット

2023年09月12日07時38分

20カ国・地域首脳会議(G20サミット)=9日、インド・ニューデリー(AFP時事)

20カ国・地域首脳会議(G20サミット)=9日、インド・ニューデリー(AFP時事)

 10日閉幕した20カ国・地域首脳会議(G20サミット)は、食料・エネルギー価格の高騰で困窮する途上国への支援強化を打ち出した。議長国インドが主導したアフリカ連合(AU)の加盟も決まり、世界経済の中で新興・途上国の存在感は一段と増した。ロシアのウクライナ侵攻を巡る溝を埋められないまま新メンバーを迎えたG20は、機能不全を脱却し、成長が鈍化した世界経済を回復軌道に導く処方箋を示せるのか正念場が続く。

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 「食料やエネルギーの課題に対し、具体的な解決策を講じなければならない」。インドのモディ首相は初日討議の冒頭、途上国が直面する危機を乗り越えるため、各国に団結と協力を呼び掛けた。
 途上国は今、さまざまな問題を抱えている。気候変動に伴う干ばつや洪水による食料不安は、黒海経由でウクライナ産小麦を輸出する国際合意からロシアが離脱したことで、深刻度を増す。巨大経済圏構想「一帯一路」を掲げる中国の過剰なインフラ融資によって膨らんだ債務の返済にも苦しむ。
 インドは今回、議長国の立場を生かしてG20の討議に「途上国の声」を反映させることに腐心した。最貧困国を多く抱えるAUのG20加盟を提案したのもその一環。先進国から経済支援を引き出し、「グローバルサウス」と呼ばれる新興・途上国のリーダーだとアピールすることに成功した。AU加盟や支援強化に同調した先進7カ国(G7)には、覇権主義的な動きを強める中国に対抗する狙いも透ける。
 ロシアの侵攻に対する立場の違いから採択が危ぶまれた首脳宣言は、食料・エネルギー高騰や温室効果ガスの排出量増加などを例に挙げて「世界経済の成長と安定に逆風が続いている」と懸念を表明。これらの課題を解決するため、「最も脆弱(ぜいじゃく)な人々を保護するために的を絞った財政支援」などの支援策を並べた。
 これまで一度もなかった首脳宣言の採択見送りという事態を回避したとはいえ、参加国の分断は続いている。AU加盟により、さらに意見集約が難しくなる恐れもある。米欧の利上げ長期化や中国の景気減速などで世界経済が下振れすれば、途上国がそのしわ寄せを受けることになり、G20が結束を取り戻せるかが問われる。

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