処理水放出、賠償対象は? 中国禁輸で強まる懸念―ニュースQ&A
2023年08月26日15時26分
東京電力福島第1原発の敷地内にたまる処理水の海洋放出が24日から始まった。これを受けて中国は日本産水産物の全面禁輸を発表、漁業者らは風評被害への懸念を強めている。東京電力ホールディングス(HD)の小早川智明社長は「適切に賠償していく」としているが、どのような損害が賠償の対象になるのだろう。
中国禁輸、輸出拡大戦略に狂い 食品700社に影響か-処理水放出、対策急務
―中国が全面禁輸を表明した。
中国は原発事故後、東京都や福島県など10都県の水産物輸入を停止したが、処理水放出を受け対象を全国に拡大させた。先月から放射性物質の検査を厳格化し、鮮魚などの輸入は事実上止まっていたが、影響が一段と広がるのは必至だ。
―損害は賠償されるのか。
東電が昨年12月に公表した賠償の考え方によると、国の公式データなどに基づき、風評影響を受けた都道府県を一括認定した上で、事業者ごとに売り上げの減少分などを補償する。水産業や農業、観光業を主に想定するが、業種や地域は問わず、放出前年の1年分の売上高などを基準に、実態に応じて賠償する方針だ。
―禁輸による影響も補償されるのか。
小早川社長は25日、「(禁輸措置で)損害が出ればしっかりと賠償する」と明言した。
―必要な手続きは。
処理水放出に伴う損害については、10月2日から賠償請求を受け付ける。11月20日以降に順次、請求をした事業者へ申込書類が届く見通しだ。東電は担当者を400人規模に増やして対応する。
―東電の経営に影響は。
東電は原発事故に関し、除染などを含め13兆円余りの賠償費用が必要と見積もっており、すでに10兆円超を支払った。賠償費用が積み上がれば東電の経営に影響を及ぼす可能性もある。
―政府の風評被害対応は。
海水や魚のモニタリング結果を公表し、科学的な安全性を国内外に発信することで風評被害の抑制に努める方針だ。風評被害対策として、販路拡大支援や水産物の一時的買い取りを行う300億円の基金も創設した。