周辺国で渦巻く反対 中国は水産物標的に―処理水放出
2023年08月22日13時32分
東京電力福島第1原発の処理水海洋放出には、中国や韓国など周辺国で強い反対の声が巻き起こっている。日本政府にとって、国際世論の説得は今後の大きな課題だ。
処理水、「科学的問題なし」と容認 尹政権、懸念解消に苦心―韓国
中国は7月から日本産水産物の全量検査を開始。鮮度が重要な生鮮品は中国向け輸出が事実上止まったとみられる。中国外務省報道官は処理水を「核汚染水」と呼び、「日本は太平洋を下水道と見なしている」などと繰り返し批判。日中関係の冷え込みを背景に、中国が処理水問題を「外交カード」に使い揺さぶっているという見方がある。
中国政府は原発事故後、福島や宮城、東京、千葉、埼玉、茨城、栃木、群馬、新潟、長野各都県の食品輸入を停止(新潟県産米は輸入解禁)。放出後は規制を一層強化する構えだ。香港政府も放出後はこれら10都県の水産物を禁輸する方針を表明した。農林水産省によると、今年上半期の日本の水産物輸出額2057億円のうち輸出先1位の香港が25%、2位の中国が22%を占める。
日本との関係改善に乗り出した韓国の尹錫悦政権は、放出計画が安全基準に合致するとした国際原子力機関(IAEA)の報告書を尊重する立場で、放出に反対していない。しかし韓国の世論調査では放出を懸念する回答が8割に上っており、最大野党「共に民主党」は処理水問題に絡めて尹政権批判を強めている。
太平洋島しょ国でも憂慮する意見が根強い。IAEAのグロッシ事務局長は7月、18の島しょ国・地域で構成する地域機構「太平洋諸島フォーラム(PIF)」議長国のクック諸島を訪れ、報告書への理解を求めた。