「諦めるしかなかった」 ラハイナ本願寺ご本尊―日本人僧侶の広中さん語る・ハワイ山火事
2023年08月17日07時04分
【カフルイ(米ハワイ州マウイ島)時事】米ハワイ州マウイ島を襲った山火事で、被害が集中した島西部ラハイナ。強風にあおられ広がった火の手は、浄土真宗本願寺派のラハイナ本願寺ものみ込んだ。日本人僧侶の広中愛さん(46)が15日、取材に応じ、当時の様子や現状などを語った。
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「ご本尊も(故人を記した)過去帳も持って行きたかったが、諦めるしかなかった」。広中さんは、悔しがった。妻と子供4人と共に、東へ約20キロのカフルイにある知人宅に身を寄せている。
火災が発生した8日未明は強風が吹き荒れた。街路樹や電柱がなぎ倒されていた。停電に見舞われたことを受け、食料を調達し自宅に戻る途中、爆発音を聞いた。2日分の衣服とパスポートを持って家を出たが、「まさか寺が燃えるなんて思わなかった」。
ご本尊を残すことが気がかりで、途中で車を止め、1人で走って戻った。ただ、寺の周辺には火が広がり、引き返すしかなかった。ラハイナでは「山火事がしょっちゅうある。問題は風だった」と考えている。
ラハイナで2010年から暮らしてきた。「港町特有の多様性があり、コミュニティーを大切にしてきた」と愛着を語った。寺や家族の思い出の品、町が焼かれ、「将来のアイデアは皆無。できることを力の限りやるしかないが、今は力の源泉がない」と肩を落とした。
「泣き虫」だと自称するが、火災が起きてからは泣いていない。広中さんは「規制が解除されたら、ご本尊のあった場所の灰をいただき、お念仏をする」と語り、その際に目いっぱい泣き一つの区切りとしたいという。その灰は「次にお迎えするご本尊に組み込みたい」と願っている。