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「デジタル社会」正念場 マイナ総点検の結果焦点―混乱拡大を警戒

2023年08月08日20時39分

記者会見する河野太郎デジタル相=8日、東京都千代田区

記者会見する河野太郎デジタル相=8日、東京都千代田区

 政府は8日、マイナンバー制度の相次ぐトラブルを受けた総点検の中間報告を公表した。制度に対する国民の不信感が高まる中、原則11月までに実施する総点検の結果が今後の大きな焦点となる。混乱がさらに拡大すれば、マイナンバーカードと健康保険証を一体化する「マイナ保険証」に関連し、2024年秋に現行の保険証を廃止する方針に影響を及ぼす可能性もあり、政府が目指す「デジタル社会の形成」は正念場を迎える。
 ◇信頼回復に意欲も
 「しっかりと日本のデジタル化を進めるのが私の責任だ」―。中間報告を受けた臨時記者会見で河野太郎デジタル相は、人為的ミスの再発防止策やマイナ保険証の利用促進策などを列挙し、信頼回復に意欲を示した。
 マイナンバー制度を巡っては、マイナ保険証や障害者手帳などで別人の情報が登録されるミスが続出。公金受取口座に他人の情報がひも付けられた問題では、政府の個人情報保護委員会がデジタル庁に立ち入り検査する事態に発展した。現行の保険証廃止時期については与野党から延期を求める声が噴出し、岸田文雄首相が4日に総点検やその後のデータの修正作業を見極めて判断する意向を示したばかりだ。
 首相は8日の「マイナンバー情報総点検本部」で、これまで「秋まで」としていた点検の期限を「11月末まで」と設定した。河野氏も「期限よりも、(点検を)しっかりやってもらう方を優先したい」と指摘。作業を担う自治体や健康保険組合などに配慮し、点検期間を最大限確保する姿勢を示した形だが、新たなトラブルの発生を警戒する思いもにじませた。

 ◇苦い記憶
 人口減少が進む中、政府はデジタル社会の形成を通じた効率的できめ細かいサービスの提供を重点課題に位置付ける。河野氏は「今までと同じ行政のやり方を続けることは困難になっていく。行政のデジタル化に思い切ってアクセルを踏みたい」と強調する。
 政府には、新型コロナウイルス感染拡大時の1人当たり10万円の給付がデジタル化の遅れでスムーズに進まなかった苦い記憶がある。首相は本部会合で、「デジタル敗戦を二度と繰り返さないために、デジタル化の歩みを止めてはならない」と述べ、取り組みの必要性を訴えた。
 ただ、中間報告ではマイナ保険証の誤登録が新たに1069件確認され、総点検を進める過程でトラブルの件数が今後さらに増える可能性もある。政府は今回示した再発防止策などを不安払拭につなげたい考えだが、関係者からは「この問題はしばらく尾を引くのではないか」との声も漏れている。

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