アフリカ会議、ウクライナが影 穀物合意停止で説明責任―ロシア
2023年07月29日07時17分
ロシア北西部サンクトペテルブルクで27、28両日に開催された「ロシア・アフリカ首脳会議」には、ウクライナ侵攻が影を落とした。プーチン政権は孤立回避と対米けん制に向け、アフリカなどの新興・途上国「グローバルサウス」の取り込みを画策。だが、自らウクライナ産穀物輸出合意の履行を停止し、アフリカ側で食料危機への懸念と輸出再開を求める声が高まったことで、説明責任を果たすよう迫られた。
南ア大統領、穀物合意再開を要請 ロシアの無償提供に「物乞いでない」
プーチン大統領は28日の全体会合で、ロシアは西側諸国の制裁の中でも「アフリカ向け農産物供給を増やしている」と強調。最貧国に穀物を無償供給する意向を改めて表明し、懸念を取り除こうと試みた。
27日の公式夕食会では「ソ連は、アフリカ人民が植民地主義やアパルトヘイト(人種隔離)と闘うのを支援した」「わが国は食料問題などの解決に貢献し続ける」と演説。西側諸国ではなくロシアこそがアフリカの擁護者だと、改めてアピールしていた。
一方で、ロシアの方が「助け船」を出してもらった側面もある。侵攻が長期化し解決の糸口が見つからない中、アフリカ7カ国の首脳らは6月中旬、独自の「和平案」をまとめ、ウクライナとロシアを歴訪する仲介外交を展開。今回の首脳会議に合わせ、アフリカ側とプーチン氏の協議の「第2のラウンド」(南アフリカ与党幹部)が28日夜(日本時間29日未明)に開かれる。
プーチン政権はかねて、ロシア産穀物・肥料の輸出に向け、西側諸国の制裁解除を要求してきた。南アのラマポーザ大統領が示した10項目のウクライナ和平案は、黒海経由の穀物輸出のため「あらゆる障害を取り除く」必要性を指摘しており、ロシアの主張とも一部が重なる。プーチン氏は28日、和平案に関して「慎重に検討している」と述べた。
ロシアが米国に対抗する「多極主義」の場として重視する新興5カ国(BRICS)は8月、南アで首脳会議を開催する。しかし、プーチン氏は自身に逮捕状を出した国際刑事裁判所(ICC)の加盟国・南ア訪問を断念。ラマポーザ氏は29日、プーチン氏と会談する予定で、BRICS首脳会議に先立ち個別に意見交換する方針とみられる。