教皇のパン屋さん、力尽きる 住民減って経営悪化―ローマ
2023年07月09日17時17分
【ローマAFP時事】バチカン市から歩いて数分の距離にあり、歴代のローマ教皇御用達のパン屋さんとしてほぼ1世紀、営業してきたローマのパン店「アッリゴニ」が力尽きて閉店する。アンジェロ・アッリゴニ店主(79)は「11日にオーブンの火を落とす」と語った。
「夜のパン屋さん」が人気◆ホームレス支援、フードロス削減も【時事コム取材班】
店主の父が店を始めたのは1930年。教皇はピウス11世だった。当時から教皇の食卓にパンを届けることが自慢で、新しい教皇が誕生するたびに好みのパンも変わった。
現在のフランシスコ教皇もひいきにしてくれているが、バチカン(ローマ教皇庁)以外の地元客の減少が徐々に経営を悪化させていた。そこに燃料費の高騰が重なった。
店主は「街の様子がすっかり変わってしまった」と嘆いている。「かつては住民であふれた家という家が今は観光客のための貸部屋になった」。観光客はレストランへ行ってしまう。毎日の食卓に上るパンを買う客は激減した。
わずかに残っている常連客の衝撃は大きい。観光ガイド、フランチェスカ・パントゥサさんは「これでこの通りも観光客向けのレストランだけになってしまう。適正価格で良い品を買える上、アンジェロは親切で優しかった。もう泣きたいくらいだ」と閉店を惜しんだ。