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武器製造サイト、法規制進まず 警察庁が経産省に呼び掛け―AI監視も「解決策にならず」・安倍氏銃撃1年

2023年07月09日07時10分

 安倍晋三元首相銃撃事件から8日で1年となったが、インターネット上で銃や爆発物の製造方法を紹介する動画やサイトの法規制は進んでいない。警察庁は、武器等製造法などを所管する経済産業省に規制検討を呼び掛けているものの、同省は「警察の取り締まりで十分」などと法規制の必要はないとの認識を示し、平行線をたどっている。

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 銃撃事件では、山上徹也被告(42)=殺人罪などで起訴=がネットの動画を参考に銃や火薬を作ったとみられ、警察庁は、銃の製造方法などが容易に閲覧できることを問題視している。
 同庁は2月から、銃・爆発物の製造などの有害情報について、国内外のサイト管理者やSNS運営業者に対する削除要請を始めた。9月からは、人工知能(AI)を導入し情報の検出体制を強化する方針だ。
 ただ、捜査関係者は「現場で地道に頑張っているが、削除要請に応じるとは限らず、抜本的な解決策にならない。法改正を考えてもらいたい」と話す。警察庁が所管する銃刀法は銃などの管理に関する法律で、製造過程を規制するのは難しい。同庁は、武器等製造法や火薬取締法を所管する経産省に対し、規制を検討するよう働き掛けている。
 これに対し、経産省は「警察のネットパトロールで取り締まりは十分」との認識を示す。担当者は取材に「武器等製造法は武器の製造や販売を規制する法律で、製造動画やサイトは対象ではない」と指摘。別の担当者も「火薬取締法は火薬を産業で安全に使ってもらうための法律で、犯罪捜査を目的とした法律ではない。事件があったから取り締まりをするのは難しい」と話す。
 国内法を整備しても、海外サイトには法規制が及ばないという課題もある。児童ポルノ対策のように、閲覧制限する「ブロッキング(接続遮断)」を導入するのが効果的だが、憲法が保障する「通信の秘密」を理由に反対が起きる可能性もある。
 ネット社会の問題に詳しい東京都立大の星周一郎教授(刑法)は「銃の製造情報は生命身体の自由を奪う可能性がある。武器等製造法の中で、こういうケースはブロッキングできるという『制限リスト』を規定してはどうか」と話した。

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