小田が初V、新時代告げる 国枝さんの後継者、強打で―全仏テニス車いす
2023年06月10日22時14分
ヒューエットのリターンが外れて夢をかなえると、天を仰いで両拳を握った。四大大会の男子シングルスで、史上最年少17歳33日での頂点。「人生で最も幸せな日」。車いすテニス界の新時代到来を告げた小田は、センターコートに歓喜の雄たけびを響かせた。
「病気は人生の分岐点」 小田凱人の一問一答・全仏テニス車いす
身上の強打でラリーを支配した。強化したチェアワークを生かし、鋭いクロスを打ち込んで6―1で先取。「気を緩めず、次が大事」と言い聞かせた第2セットは、4―4の第9ゲームでブレークを奪って突き放す。「いろいろな感情が込み上げた」と目を潤ませた。
全仏前、四大大会シングルス28度優勝の国枝慎吾さんに頼み、東京のクレーコートで打ち合った。1月の全豪決勝を含めてヒューエットに負けが続いていた中、「考え過ぎず、自分なりにプレーしたらいい」との助言を受け、迷いが吹っ切れた。
9歳で左股関節に骨肉腫を発症。入院中、国枝さんがプレーする映像に魅了され、10歳で競技を始めた。来年のパリ・パラリンピックの会場で躍動し、史上最年少で世界ランキング1位に就くことも決まった。
名前の「凱人」はパリの名所、凱旋(がいせん)門に由来する。昨年、四大大会デビューを果たした思い入れの深い全仏で初制覇を遂げたのも運命的。引退した国枝さんの後継者となるエースは「これから僕がもっと盛り上げて、大きいスポーツにしていく」と力強く宣言した。(パリ時事)