トラック過積載で汚職 タイ警察、ステッカーで見逃し
2023年06月10日20時32分
【バンコク時事】タイの警察当局が運送業者を相手に、トラックの過積載を見逃す目印として「ステッカー」を闇で売買しているとされる汚職疑惑が浮上し、社会問題となっている。5月の総選挙で第1党となった前進党側に情報が寄せられ、SNSで告発したところ大きな反響を呼び、警察トップも認める事態に発展した。
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前進党から比例代表で立候補したウィロート氏が5月下旬、SNS上で告発した。同14日の選挙後に情報提供があったとしている。警察トップのダムロンサック長官は「過積載に関する汚職は昔からあったと聞いている」と認め、「ニュースになったので調査する」と話した。
ウィロート氏によると、月数千バーツから数万バーツ(1バーツ=約4円)でステッカーを購入してトラックに貼れば、高速道路などで警察官らが積み荷を量らなかったり、法定の50.5トンを超えても見逃されたりする。ステッカーは地域などで異なり、太陽やウサギといった絵柄があるという。
運送業者の一部が加盟するタイ陸運連盟によれば、汚職は1996年ごろからあった。業者側にはより多くの荷物を運んで利益を得るという動機もあったとみられるが、ステッカーを貼っていないと警察から嫌がらせを受ける業者もいたという。連盟は政府などに告発してきたが、これまで大きな問題にはなっていなかった。
時事通信の取材に対し、連盟のアピチャート会長は「汚職撲滅を掲げて選挙で勝利した前進党が問題を提起した今こそ、全容を明らかにするチャンスだ」と強調。ウィロート氏は「汚職との闘いでは、日本のように内部告発者を保護する法律が必要だ」と訴えた。