社会問題、選手発信の土台を 啓発に取り組む井本直歩子さん
2023年06月09日13時31分
スポーツを通じた社会問題解決に携わる井本直歩子さん(47)は多彩な経歴を持つ。競泳女子で1996年アトランタ五輪代表になったほどの元トップ選手。その後は英マンチェスター大大学院で貧困や紛争について学び、国際協力機構(JICA)や国連児童基金(ユニセフ)の一員として途上国で平和構築や教育支援に関わった。2020年3月にアテネで行われた東京五輪の聖火引き継ぎ式では、新型コロナウイルス禍による渡航制限の影響により、日本側の代表に急きょ抜てきされたこともある。
現在はアフリカ南東部モザンビークでNGO支援などを行いながら、一般社団法人「SDGs in Sports」(東京都世田谷区)代表理事としてスポーツ界のジェンダー平等や気候変動問題に目を配る。法人は3月、日本スポーツ協会と包括連携協定を締結。「今は問題に関心のあるアスリートを探している。(スキー競技の)渡部暁斗さんや高梨沙羅さんを含め、チームで学びながら発信できるプラットフォーム(土台)をつくりたい」と話す。
東京五輪を巡っては、大会組織委員会の森喜朗会長の女性蔑視発言が問題化したことをきっかけに、組織委ジェンダー平等推進チームのアドバイザーに就任。スウェーデンの環境活動家グレタ・トゥンベリさんの言動から受けた刺激も、今の取り組みにつながっている。
札幌市が招致を目指す30年冬季五輪・パラリンピックのプロモーション委員会の委員にも就き、脱炭素化に向けた世界の取り組みや重要性をアピールしてきた。「自分たち次第で、これから道が開けると思っている」と井本さん。社会問題に対するスポーツ界の意識向上に向け、さまざまな角度から啓発活動を続けていく。 (時事)