東芝買収、キオクシアが波乱要因 「米WDと統合」なら成否影響も
2023年06月09日07時35分
国内ファンド陣営が予定している東芝へのTOB(株式公開買い付け)が、成立に向け大きく前進した。ただ、今後も波乱要因となりかねないのが、東芝が4割出資する半導体世界3位キオクシアホールディングスの動向だ。同社は現在、米大手ウエスタンデジタル(WD)と経営統合に向け交渉中。実現して東芝の企業価値が向上すれば、TOBへの応募を巡る株主の判断に影響を及ぼす可能性がある。
キオクシアは、東芝の稼ぎ頭だった半導体事業が母体。東芝が2018年に経営危機に陥った際、同事業を米投資ファンドなどに売却したことを受けて19年に発足した。半導体市況の悪化で業績が低迷する中、規模拡大による生き残りを目指し、以前から協業関係にあるWDと統合交渉を進めている。
東芝にとってキオクシアは「重要なピース」(渡辺章博取締役会議長)と位置付けられており、企業価値算定への影響は大きい。実際、国内ファンド陣営はキオクシアの業績悪化などを踏まえ、東芝のTOB価格を引き下げていった経緯がある。今後、WDとの統合交渉が具体的に進展すれば、価格を引き上げないと株主がTOBへの応募を見送る可能性もある。
もっとも、半導体は経済安全保障上の重要性が高まっており、国内最大の半導体メーカーであるキオクシアと外資のWDの統合が実現するかは見通せない。東芝は8日、国内ファンド陣営によるTOBへの応募を株主に推奨することを決定。渡辺氏は記者会見で、TOB開始時点ではキオクシアの動向が「(東芝の企業価値に)劇的な影響を及ぼさない」との認識を示した。ただ、キオクシアの統合交渉が進んだ場合には、応募推奨の是非を改めて検討するとみられる。