女性不在の経営にNO 取締役選任、企業に要求―投資家ら、政府も後押し
2023年06月08日07時05分
上場企業に対し、女性取締役の登用を求める声が高まっている。多様性を重視する機関投資家が監視を強めているほか、政府も女性活用を促す方針を表明。来週以降、本格化する3月期決算企業の定時株主総会で焦点の一つとなっている。
6月の株主総会では、東レや信越化学工業、ワークマンなど、初めて女性取締役選任を諮る企業が目立つ。精密減速機大手ハーモニック・ドライブ・システムズは、EY新日本監査法人常務理事の北本佳永子氏に社外取締役就任を要請した。上條和俊取締役は会社に必要なスキルを満たす人材を探したと述べた上で、「製造業でも女性目線を生かしたい」と語る。
企業が女性登用を急ぐ背景には、多様性の確保を求めるコーポレートガバナンス・コード(企業統治指針)に加え、機関投資家らの存在がある。
野村アセットマネジメントは昨年11月、投資先の国内全上場企業に、女性取締役不在の場合、会長・社長らの取締役選任に反対する基準を新設した。他の国内機関投資家も基準を強化。海外機関投資家への影響力があるとされる米議決権行使助言大手グラスルイスは、東証プライム上場企業を対象に取締役会の10%以上を女性とするよう求めている。
キヤノンが3月に開いた株主総会では、御手洗冨士夫会長兼社長再任への賛成率が50.59%にとどまり、驚きが広がった。同社には女性取締役がおらず、野村アセットは「多様性に関する当社基準を満たさない」として、反対票を投じた。
内閣府によると、昨年時点で、取締役や監査役など女性役員がいないプライム上場企業は2割。海外企業に比べて女性登用は大幅に後れを取っており、岸田政権は5日、プライム上場企業の女性役員比率を2030年までに30%以上とする「女性版骨太の方針」案を公表した。
女性登用の意義について、大和証券の山田雪乃チーフESGストラテジストは「多様な顧客のニーズに応え、イノベーション(革新)を生み出していくことにつながり、その効果を示す調査結果もある」と指摘。その上で、個々の企業は肩書や数合わせ以上に、強化したい分野で能力を発揮できる人材を登用する必要があるとしている。