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ウクライナ志願兵、英で実戦訓練 「市街戦」「塹壕戦」想定―「国と家族守る」、反転攻勢へ決意

2023年06月07日07時05分

塹壕(ざんごう)戦の訓練を行うウクライナ兵ら=2日、英ヨークシャー

塹壕(ざんごう)戦の訓練を行うウクライナ兵ら=2日、英ヨークシャー

  • 英軍教官の指示で突入訓練を行うウクライナ兵ら。脇には常に通訳者が付き添う=2日、英ヨークシャー(一部画像処理をしています)
  • 市街戦を想定した訓練で、建物の陰に隠れるウクライナ兵ら=2日、英ヨークシャー

 ロシアの侵攻に対するウクライナの反転攻勢が焦点となる中、欧州で最もウクライナを軍事支援する英国で、ウクライナ兵を対象に市街戦や塹壕(ざんごう)戦を想定した実戦訓練が本格的に進められている。兵士の多くは戦闘経験のない志願兵で、短期間の訓練後に母国の戦地に戻ることになるが、口々に「国と家族を守るため戦う」と固い決意を示していた。

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 ◇響く射撃音
 「撃つなと言ったらすぐやめろ!」「こっちだ!」。イングランド北部ヨークシャーにある英軍訓練場。射撃音や砲撃のような音が響く中、迷彩服に身を包んだ数十人のウクライナ兵たちが、英軍教官の指導の下で市街戦を想定した訓練に励んでいた。
 ホテルや住宅に見立てた建物がある敷地はまるで映画のセットのようだが、一帯は緊張感が漂う。発煙筒が投下され、白い煙に紛れて銃を持った兵士たちが「ホテル」内へ走り込む。敵陣を奪取し、負傷者を救出するための訓練だ。教官の張り上げる声と射撃音が交差し、実際の戦闘風景のようだ。
 英軍担当官によると、この訓練は基礎的な歩兵戦術を教えるもので、期間は5週間。英国のほか北欧諸国やカナダなど計10カ国が教官を派遣している。昨夏のプログラム開始以降約1万5000人が訓練を受け、今回報道陣に公開されたコースには18~59歳の数百人が参加。大半が一般市民の志願兵で、戦闘経験があるのは1割程度という。
 プログラムは「生き残って(敵の)致死率を高める技能」(同担当官)の向上に焦点を当てて組まれている。本来なら基礎戦術の習得には数カ月を要するが、ウクライナ兵たちはたった5週間で学ばなくてはならない。ロシア兵と対峙(たいじ)する本物の戦闘がすぐに待ち構えているからだ。
 訓練兵の一人、イーホルさん(32)はウクライナ西部リビウ出身の元石工で、2週間前に英国に来た。戦闘経験はないが「狩猟で銃を使ったことがあるから大丈夫」。「自分には妻や子供を守る責任がある」と語り、「早く戻って戦いたい。自ら選んだことだから恐れはない」と言い切った。
 ◇「ロシア兵急襲」を訓練
 近くではノルウェー軍が指導に当たる塹壕戦の訓練も行われていた。入り組むようにして掘られた塹壕は腰の辺りの深さ。兵士たちは地面をはって塹壕に近づき、手りゅう弾に見立てた青い筒を投げ込んで突入。立てこもるロシア兵に対する急襲を想定している。皆が砂まみれになりながら、教官の指示に沿って訓練を繰り返していた。
 訓練では女性兵の姿も見られた。ノルウェー軍の部隊指揮官によると、今回の塹壕戦訓練に参加した120人のうち女性は5%。訓練内容に性別による違いはなく、女性も男性と全く同じ内容をこなすのだという。
 女性兵の一人で、キーウ(キエフ)出身のアンジェリカさん(28)が、身の安全のため布で顔を隠した状態で取材に応じた。司書として働いていたが、侵攻で「たくさんの友人を亡くした」ことをきっかけに志願した。訓練は「簡単ではない」がこなせないほどではなく、女性であることで問題を感じたことはないという。「侵略に抗して生き残り、国を守るためには戦うしか選択肢はない」と静かに語り、手にした銃を握りしめた。

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