反スパイ法で「打撃力」拡大 外国組織の取り締まり強化―中国情報機関トップ
2023年06月07日07時05分
【北京時事】中国情報機関トップの陳一新・国家安全相は5日付の官製メディアに寄稿し、スパイ活動を取り締まる改正反スパイ法について「(同法を)重点に、国家安全法規を系統的に掌握する」と訴え、同法を軸に国内の統制強化を進める方針を表明した。また、「法執行と司法による打撃力を拡大しなければならない」と言明した。スパイ行為の定義を拡大した改正反スパイ法は、7月1日に施行される。
陳氏は、共産党幹部を養成する中央党校の機関紙・学習時報に寄稿した。この中で「敵対勢力の浸透、破壊、転覆、分裂活動を厳格に防止する」と指摘。「法に基づいて反スパイ闘争を展開し、国外のスパイ機関による活動を厳しく取り締まる」と強調した。共産党体制と相いれない欧米などの価値観が流入することを警戒しているとみられる。
陳氏は習近平国家主席に近い。習指導部は反スパイ法に基づき、日本人を含む多くの外国人を拘束してきた。3月には北京で、アステラス製薬の日本人男性が同法違反容疑で拘束された。在留邦人の間では、法改正によって当局の恣意(しい)的な運用が一層進むという懸念が広がっている。
一方、5月末には、習氏がトップを務める治安統括組織「中央国家安全委員会」の会議で、米中対立を念頭に「直面する国家安全問題の複雑さ、困難さは明らかに増大している」との認識が示された。また、「強風や荒波に備えなければならない」として、人工知能(AI)をはじめとする最新技術を活用して監視システムを強化する方針を確認した。