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自社株買い、なぜ増加 資本効率、投資家を意識―ニュースQ&A

2023年06月05日17時05分

【図解】上場企業の自社株買いの推移

【図解】上場企業の自社株買いの推移

 上場企業の自社株買いが増えている。東海東京調査センターの集計によると、2022年は過去最高の9兆3900億円を記録。23年も5月は3兆2000億円を超え、単月としての過去最高を更新した。企業の資本効率や株主還元に対する意識の高まりを背景に、今後も高水準で推移するとみられ、株高の一因となりそうだ。
 ―自社株買いとは。
 上場企業が自社の株式を市場で購入することだ。企業がどれだけ効率的に稼いでいるかを示す自己資本利益率(ROE)や、株価が割安か割高かを示す株価純資産倍率(PBR)といった指標が改善するほか、需給が締まることで株価上昇も期待できる。
 ―なぜ増えているのか。
 日本企業は稼いだ利益をため込む傾向が強いが、金融市場では資本を効率的に使った経営が求められており、SMBC日興証券の伊藤桂一チーフクオンツアナリストは「手っ取り早いROE改善策として、自社株買いが増えている」と指摘する。株価対策や株主還元策として、企業に自社株買いを迫る投資家も多い。
 ―今年に入ってからの変化は。
 東証は3月、株価が極めて割安とされるPBR1倍割れなどの上場企業に対し「資本収益性や成長性に課題がある」と指摘し、資本コストや株価を意識した経営を求める通知を出した。こうした流れの中で、PBR改善を目標に自社株買いするような企業もある。
 ―市場の反応は。
 発表後に株価が上昇する企業が多く、好意的に受け止められている。ニッセイ基礎研究所の森下千鶴研究員の調査では、19~22年度に自社株買いを発表した東証株価指数(TOPIX)構成銘柄は、発表後の株価上昇率がTOPIXを平均約2~3%上回った。
 ―問題はないのか。
 自社株買いを優先すると、研究開発や企業の合併・買収(M&A)など、将来の成長に向けた投資が削られる恐れもある。中長期的には企業が収益を伸ばして株価を上げることが求められ、東証も「自社株買いや増配のみの対応や一過性の対応を期待するものではない」とくぎを刺している。

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