イランとの対話焦点 IAEA理事会開幕
2023年06月05日20時04分
【ベルリン時事】国際原子力機関(IAEA)の定例理事会が5日、ウィーン本部で開かれた。5日間の日程で、ロシア軍が占拠するウクライナ南部ザポロジエ原発を巡る情勢や、高濃縮ウランの生産を加速させるイランへの対応などを協議する。IAEAのグロッシ事務局長はイランとの対話を模索しており、欧米など加盟国からの理解が得られるかが焦点となる。
迫る核の危機、対応急務 真価問われるIAEA―5日から理事会
グロッシ氏は開幕あいさつで、5月にイラン中部フォルドゥなどの核施設に初めて濃縮監視装置が導入されたことを紹介しつつ、「(イランとの協力に)一定の進展はあるが、期待したほどではない」と指摘。解決すべき課題が残っていると説明した。また、ザポロジエ原発への攻撃などを禁止する「5原則」への賛同を求めた。
IAEAは最新の報告書で、イランが最大60%の濃縮ウランを114.1キロ保有していると明らかにした。核爆弾2個分に相当する量とされ、核合意からの逸脱に歯止めがかかっていない。一方でイランは監視の受け入れを広げ、未申告施設でウラン粒子が見つかった問題の説明にも一部応じる姿勢を示している。
これまで非難決議などでイランへの圧力を強めてきた欧米も、ここ数カ月は交渉の余地を探っているもようだ。イランの核戦力保有に現実味が増す中、敵対するイスラエルが開発阻止に向けた武力行使に及ぶことへの懸念が背景にある。西側外交官の一人は、英紙フィナンシャル・タイムズに「紛争に発展する可能性を恐れている」と語った。
ただイランの協力姿勢に対する懐疑的な見方は残っており、IAEAがどの程度、核開発を正確に把握できるかは不透明なまま。イランへの対応で、どのような方向性が打ち出されるかは予断を許さない情勢だ。