エジプト、イランが和解か 経済関係期待も残る懸念
2023年06月05日20時23分
【カイロ時事】長年断交状態にあるエジプトとイランが和解する可能性が出てきた。イランの最高指導者ハメネイ師がエジプトとの関係改善を歓迎すると表明。中東メディアは年内にも両国が大使を交換するとの観測を報じている。不況にあえぐエジプトはイランなどとの経済関係を、米国の経済制裁に苦しむイランはアラブ諸国との関係強化の足掛かりをそれぞれ期待しているとみられる。
ハメネイ師は5月29日、テヘランでオマーンのハイサム国王と会談。国営イラン通信によると、仲介役とされるハイサム国王が関係正常化を求めるエジプトの意向を伝え、ハメネイ師が「歓迎する。問題ない」と応じたという。
1979年のイラン革命で成立した現体制は、イスラエルと平和条約を結んだエジプトと断交した。その後、2012年にエジプトでイスラム組織ムスリム同胞団出身のモルシ大統領が就任すると両国は接近。しかし、モルシ政権がクーデターで打倒され、14年にシシ政権が発足して以降、関係正常化に向けた動きは止まっていた。
今年に入って中東で対立していた国々の正常化の動きが急速に進んだことが、エジプトとイランの関係にも影響を及ぼしたとみられる。イランとサウジアラビアは今年3月、中国の仲介を受け外交関係の修復で合意。AFP通信は外交関係者の話として、6月6日に在サウジ・イラン大使館が再開すると報じた。5月にはシリアが内戦下で資格停止となっていたアラブ連盟に復帰し、アサド大統領がサウジを訪問した。
報道によると、イランとエジプトの外交・情報当局者は3月と4月に非公開協議を実施していた。また、イランとエジプトは共に中国やロシアとの関係を深めており、こうした点も正常化の動きを後押しした可能性がある。
エジプトのアラブ調査研究センターのハミ・スレイマン所長は、イランにとってエジプトとの和解は「アラブ諸国との関係改善への突破口になる」と強調。不況を脱したいエジプトとしては、イランやイランが影響力を持つシリア、レバノンなどとの経済関係強化が視野にあるという。
ただ、スレイマン氏は、民兵組織を含む親イラン勢力の中東地域での影響力拡大をエジプトは依然懸念していると指摘。関係を改善しても、維持できるかは「イラン次第だ」と語った。