「このままではいけない」 体調不安抱え、募る焦り―滋さん死去3年で早紀江さん
2023年06月05日07時04分
北朝鮮に拉致された横田めぐみさん=拉致当時(13)=の父、滋さんが87歳で死去してから5日で3年。妻の早紀江さん(87)が命日を前に報道各社の取材に応じた。自身も体調に不安を抱え、先の見えない状況に「このままではいけない」と、焦りを募らせていた。
早紀江さんは、滋さんの遺影を自宅リビングに飾り、毎朝温かいお茶を出して話し掛けるという。「どうにもならないよ。どれだけ頑張っても進歩しない。残念だけど、どうしたらいいんだろう」。一方、めぐみさんの写真には「日本中の方が頑張っているから大丈夫だよ」などと言葉を掛け、励ましている。
滋さんは1997年に結成された拉致被害者家族会で初代代表を務め、講演や署名活動に奔走した。早紀江さんは「とにかくまじめな人。命がなくなるまで頑張ろうと思っていたのでは」と振り返る。
早紀江さんは今年2月、滋さんと同じ87歳になった。今は回復したが、3月ごろに体調を崩して入院。「死んでしまうとはこういう瞬間だな」と感じ、「せめてもう2年だけでも頑張れる力を」と祈ったという。
拉致被害者の親世代で存命なのは、早紀江さんと有本恵子さん=同(23)=の父明弘さん(94)だけになった。「『早くしてください』と何十年も言い続けている」。早紀江さんは怒りをあらわにする。取材では、岸田文雄首相が日朝会談実現に向け、首相直轄のハイレベル協議を行う意向を示したことにも触れた。「積極的な思いは強いと(感じた)。期待したい」と望みをつないだ。