少子化対策、負担ぼやかす岸田首相 野党、「衆院解散布石」と警戒
2023年06月02日07時06分
「異次元の少子化対策」を巡り、岸田文雄首相は具体的な国民負担を明示せず「年末までに結論を得る」と先送りした。野党は「国民を愚弄(ぐろう)するやり方」(立憲民主党の安住淳国対委員長)と反発。衆院解散に向けた首相の「環境整備」と警戒する声も相次いだ。
児童手当、24年度中に拡充 3.5兆円の財源、年内結論―少子化対策で素案・政府
1月に異次元の対策を表明して以降、首相は予算や財源の検討を政府に指示し「子ども予算倍増に向けた大枠を6月までに提示する」と繰り返してきた。
首相は1日、千葉県松戸市の子育て施設を視察。財源の先送りではないかと記者団がただしたのに対し、「そういう事実はない。ぜひ、こども未来戦略方針の現物を見ていただきたい」と反論した。
だが、政府が1日公表した「こども未来戦略方針」の素案は、児童手当の所得制限撤廃など2024年度から実施する年3.5兆円規模の対策の財源について詳細を先送りした。社会保険料の上乗せを念頭に置いた「支援金制度」創設の方針を明記する一方、徹底した歳出改革で「実質的に追加負担を生じさせないことを目指す」とした。
背景には、早期の衆院解散・総選挙が取り沙汰される中、国民の「痛み」に直結する議論を避けたい自民党の思惑がある。世耕弘成参院幹事長は5月、「財源論が突出している」と政府内の議論をけん制。茂木敏充幹事長も「社会保険料の引き上げや上乗せを考えているわけではない」と沈静化を図った。ただ、政府関係者は「社会保険料の負担増なしにやれる根拠はない」と認める。
歳出改革も、政府は防衛力の抜本的強化に伴い年間1兆円規模の財源として既に当て込む。少子化分野の歳出改革は社会保障分野にならざるを得ないとみられるが、想定する診療報酬削減などには医師会や党内の反発が強い。
防衛増税や少子化財源などの国民負担の具体化が年末に先送りされたことで、首相は年内の衆院解散を視野に入れ始めたのではないかとの観測もくすぶる。国民民主党の玉木雄一郎代表は1日、記者団に「解散への環境整備」との見方を示し、「予算拡充で各党に差はない。財源を争点に選挙をやればいい」と訴えた。
立民の安住国対委員長も党代議士会で「(首相が)何か考えていると勘ぐりたくなる」と指摘。「後からこっそり請求書を国民に回して、今だけしのげばいいというやり方だ」と断じた。