打倒リネールへ「ひとひねり」 斉藤に課題と可能性―国士舘大柔道部監督
2023年06月01日18時45分
柔道男子100キロ超級の斉藤立(国士舘大)は、ドーハで5月に行われた世界選手権でテディ・リネール(フランス)にはね返された。頂点に長年君臨してきた王者に準々決勝で延長の末、指導三つで反則負け。斉藤を教える国士舘大の吉永慎也監督は、7分以上に及んだ一戦に課題だけでなく可能性も感じた。
開始1分すぎ、両襟をつかんで斉藤の頭を無理に下げさせたリネールに先に指導が入った。さらに、斉藤が引き手を握って場外際で内股を仕掛けると2メートルを超える巨体が浮いた。吉永監督は「あとひとひねりで技ありだった。通常の技でリネールがああいう形になるのも珍しい」と悔しがる。
こう着状態が続いてリネールに二つ目の指導が入れば、相手が焦り、さらに好機が生まれる可能性はあった。順調に見えた展開は、3分になる直前に斉藤が最初の指導をもらって崩れた。しつこく頭を下げさせられ、苦し紛れに出した技が「偽装攻撃」の判定に。監督は「心理的に『見栄えが悪いから何とかしないと』と思ったのかもしれない」と胸中を察した。
リネールは再び指導をもらうリスクを恐れず、斉藤の頭を下げさせる戦略に徹した。監督は「あれが反則かと言われれば反則。それを気にせずにやってきたのが経験の差なのか」と王者のすごみに舌を巻く。その後も同じ展開を強いられ、延長戦で「消極的」と見なされた指導が斉藤に二つ入って試合は終わった。
老かいな34歳に21歳が屈した。それでも、監督は「しっかり組んで、しっかりした技で投げに行けるのは斉藤だけ」と立ち技の威力は証明できたと見る。「(リネールに)技で投げられることはないぞ」と伝えて送り出した通り、「受け」が通用することも示した。
来年のパリ五輪に出場できれば、リネールの母国で再戦することになるかもしれない。頭を下げさせられることなくチャンスで投げ切れるか。「斉藤の組み手に懸かっている。今以上に磨くしかない」と監督は言う。