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52年前に逃した金星 伝説のイングランド戦―山口良治さん、現代表に期待・ラグビー日本代表

2023年06月01日17時47分

取材に応じる元ラグビー日本代表の山口良治さん=1月5日、京都市上京区

取材に応じる元ラグビー日本代表の山口良治さん=1月5日、京都市上京区

 9月8日開幕のラグビー・ワールドカップ(W杯)フランス大会に向け、2大会連続の8強入りを目指す日本代表は12日からの合宿で本格的な準備をスタートさせる。1次リーグD組の第2戦では、ラグビー発祥の地のイングランドと対戦。過去10戦全敗だが、歴史をひもとくと、1971年9月28日に3―6と善戦している。唯一の得点となるPGを決めたのは、かつて京都・伏見工高(現京都工学院高)で監督を務めた山口良治さん(80)。東京・秩父宮ラグビー場の観客を熱狂させた一戦は、今も語り草だ。

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 山口さんは人気ドラマ「スクール☆ウォーズ」のモデルとして知られていることもあり、インタビューや講演で話すのは指導者時代のことがほとんど。半世紀以上も前の選手時代の記憶は曖昧だという。ただ、フランカーとしてイングランドの大型FWにぶつかった時の衝撃は今も体が覚えている。「タックルにいくたびに切り株に当たっているような感じだった。何回も動かない木にダーンと当たった」
 イングランド代表は71年9月21日に全早大と対戦。山口さんはスタンドで観戦し、大男たちが全早大の選手を「蹴散らす」光景を目の当たりにした。相手FWの平均体重は、国内で重量FWを集めたはずの日本代表を約15キロも上回っていた。「こんなやつらとやらないかんのかと思った。怖くて逃げ出したかった」というのが本音だった。
 日本代表を率いたのは、名将の大西鉄之祐監督。相手を徹底的に研究し、過酷な合宿でチームに緻密な戦術を仕込んだ。一方で選手を奮い立たせる演出も。試合直前には兵士を戦場に送り出す儀式の水杯を選手と交わし、杯をたたき割って「死んでこい」と声を上げた。山口さんは「前時代的」とも思ったが、いざグラウンドに入ると不思議と恐怖心は消えていた。大男を相手に「捨て身のタックル」を繰り返し、ノートライに抑えた。
 大西監督は、試合前に「日本ラグビーの歴史的創造者となれ」と説いた。近年の日本は世界の舞台で目覚ましい結果を残しているとはいえ、前回W杯準優勝のイングランドの壁は依然として高い。山口さんは「歴史をつくってくれるかな」と現代表に期待する。52年前に届かなかった金星を挙げれば、日本ラグビー史にさんぜんと輝く一勝となる。
 
 ◇山口良治さんの略歴
 山口 良治(やまぐち・よしはる)福井・若狭農林高から日大へ進学し、日体大に編入。卒業後は岐阜県で体育教員となり、ラグビー部が強かった京都市役所(教育委員会)に移った。日本代表13キャップ。引退後は京都・伏見工高(現京都工学院高)で教員に。75年からラグビー部監督となり、80年度に故平尾誠二さんらを擁して初の全国制覇。「泣き虫先生」の愛称で、弱小ラグビー部を強豪に育て上げた物語は「スクール☆ウォーズ」の題名でドラマ化された。福井県出身。80歳。

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