安全対策、骨抜きに 「聴衆は関係者限定」うのみ―サイト告知把握せず・岸田首相襲撃
2023年06月02日07時09分
和歌山県警と演説主催者の自民党和歌山県連は、事件3日前に合同で現地調査を実施した。県警が、県連側の「聴衆は漁協関係者のみ」との説明をうのみにしたことで、安全対策が次々と骨抜きになっていった。事件前日に自民党のウェブサイトに載った告知も、県警は気付いていなかった。
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報告書によると、県連から4月7日、県警に対し岸田文雄首相が漁港で演説を行うとの連絡があった。12日に県警本部の警備課長や署長ら10人と、県連・漁協関係者約10人による合同現地調査が行われた。
県警は聴衆最前列から演説台まで10メートル以上の距離を確保するよう要請したが、県連側が難色を示し、約5メートルに設定された。県連側は、参加者は漁協関係者約200人で、他に広く参加を呼び掛けないと説明。実際は14日に自民党サイトに和歌山市の漁港で演説する告知が出たが、県警は気付かなかった。捜査関係者によると、木村隆二容疑者宅にあったパソコンには、同サイトを検索した履歴が残っていた。
県警は漁協関係者以外の入場を防ぐため、識別措置を求めた。県連関係者は水色ジャンパーを着て、スタッフ役の漁協関係者は青色リボンを着けることになったが、配偶者や親族については顔で識別するとされた。
県警は聴衆エリアの入り口に受付を設置することや、金属探知検査の実施を求めたが、県連側は聴衆が漁港関係者に限られるとして、いずれも実施しなかった。
15日午前11時17分ごろ、首相が漁港に到着。木村容疑者は約1分後に着き、同19分ごろにはコーン標識とバーで囲われた聴衆エリアの入り口付近で待機を始めた。同じ頃、警護員ではない人物がバーを取り外したので警護員がバーを戻そうとしたところ、3人がエリア内に入場。木村容疑者は3人に続いて入場口に近づき、その後に侵入した。警護員も識別役の漁協関係者も気付かなかったという。