高速「無料化」事実上撤回 老朽化対策、財源は確保―改正法
2023年06月01日07時08分
改正道路整備特別措置法が31日成立し、高速道路の有料期間を2065年から最長2115年まで延ばすことが決まった。料金を長期間徴収できることが担保され、老朽化対策を担う高速道路会社の財源面の不安は当面解消された。政府は道路建設の借金を返した後で無料化する従来方針を変えていないが、無料化は90年以上先の話に。事実上の撤回とも言え、利用者の不満は根強い。
高速道路整備は、利用者が建設・更新費用を負担すべきだとの考えに基づき料金を徴収しており、返済が終われば一般の道路と同様に無料にする原則となっている。05年の道路公団民営化当時約38兆円あった有利子債務は約26兆円まで減ったが、急速な老朽化で更新すべき箇所が次々判明し、国土交通省は徴収期間の大幅延長に踏み切った。
無料化方針を正式に撤回し、永久有料化にかじを切るべきだとの意見も多いが、従来の仕組みを抜本的に変える必要があり、課税を免除されている固定資産税の扱いも課題となる。高速道路は、将来無料化され公共財産となる前提のため、固定資産税はかかっていないが、永久有料化されれば事業用の資産と見なされ課税対象となり、高速会社の負担は年間数千億円に上ると見込まれる。料金に跳ね返るのは必至で、混乱は避けられない。
今回の法改正は、老朽化対策が待ったなしの中、無料化の旗を下ろさず半永久的に料金徴収を続けられるほぼ唯一の選択肢だった。法案審議で野党は「新たな更新事業が見込まれれば、また期限を延ばすことになる」「完全無料になると思っている人は、多分誰もいないのでは」と指摘。国交省幹部は「抜本的な制度見直しは道路公団民営化並みの機運がないと難しい」と話す。
改正法では更新計画を定期的に見直す仕組みを取り入れた。日本の人口は70年に3割減の8700万人になると推計される。料金収入の大幅増は見込めない中、長期間徴収できる仕組みに安閑とせず、着実な更新や施設の長寿命化と並行して、コスト削減や思い切った変動料金制、値下げの検討など、利用者の負担軽減を意識した厳しいチェックが求められる。