南米地域統合の議論活性化 ブラジル主導、経済・環境に対応―ベネズエラで相違も
2023年06月01日07時07分
【サンパウロ時事】ブラジルのルラ大統領の主導で、南米の地域統合を目指す議論が活発化している。南米12カ国の首脳らが参加した国際会議が5月30日にブラジルで開かれ、経済や環境面など地域が抱える共通の課題に対応するため統合・協力を推進することで一致。会議を主宰したルラ氏は、「南米が結束の道を再び歩む機会が与えられている」と強調した。
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南米の首脳が一堂に会したのは約10年ぶり。ブラジルは「グローバルサウス」と呼ばれる新興・途上国の代表格で、今年就任したルラ氏が積極的な外交を展開。ルラ氏は広島市で5月に開かれた先進7カ国首脳会議(G7サミット)にも参加しており、地域の取りまとめ役として発言力を高める思惑があるとみられる。
南米の統合では、2008年5月に12カ国により設立条約が採択された国際機構「南米諸国連合(UNASUR)」が知られる。その後、各国の政権交代で誕生した保守政権が背を向けたため、同連合は事実上機能を停止。だが最近になり各国の政権が左傾化しており、統合の機運が再び高まった。
30日の会議終了後の声明は、実質的な「南米自由貿易圏」の構築を視野に、貿易や投資の拡大を目指すと表明。気候変動や貧困、組織犯罪なども課題に挙げた。今後は外相レベルで協議し、南米統合に向けたロードマップ(行程表)を作成する方針だ。
ただ、会議では、ルラ氏が前日に独裁色を強めるベネズエラのマドゥロ大統領と会談し、同氏の政権運営を擁護するかのような発言を行ったことに、ウルグアイやチリが反発した。ベネズエラとの距離を巡る首脳間の立場の相違が浮き彫りになった形で、統合を進める上で足かせとなる可能性がある。