信託型は「給与」扱い 株式報酬課税、税率最大55%―国税庁
2023年05月31日09時53分
国税庁は30日、株式を使った報酬制度の一つ「信託型ストックオプション(自社株購入権)」について、最大約55%の税率がかかる給与所得として扱うとの見解を示した。同日、ホームページ上で取り扱いについてのQ&A集を公表した。信託型については税率約20%の譲渡所得と認識して税務処理していたスタートアップ(新興企業)などの間では戸惑う声が出ている。
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国税庁は信託型について、報酬として受け取る企業の役員らに金銭負担がなく、会社からの報酬と認められるため、信託型は給与所得に当たると明確に示した。すでに役員らが権利行使した分についても、会社が源泉徴収することを求める。
ストックオプションは一定の価格で役員らが自社株を購入できる権利。株価が上昇した時点で権利行使し、取得した株式を売却することで利益を得られる仕組みだ。
信託型については、会社が成長する前に発行したストックオプションを信託し、信託会社が役員らに配布する。役員らが権利を行使して株式売却した時に譲渡所得として約20%の税率で課税されるという認識から、導入する企業が増えていた。
Q&A公表に先立って29日に開かれたスタートアップ向けの説明会では、「国の支援政策と齟齬(そご)があるのではないか」「優秀な人材が逃げるリスクがある」といった意見が企業側から出た。
鈴木俊一財務相は30日の閣議後記者会見で、「一部の信託会社が権利行使時に給与課税されないとの説明を行ってきた」と指摘。その上で、「国税庁では関係業界に考え方を丁寧に説明してきたところだ」と反論した。