米中関係改善に冷や水 制裁問題で双方譲らず―国防相会談見送り
2023年05月31日07時04分
【北京、ワシントン時事】6月上旬で調整されていた米中国防相会談が、見送られることになった。中国の李尚福・国務委員兼国防相が米政府の制裁対象となっていることが原因とみられ、米国防総省は29日に発表した声明で「中国政府が会談の要請を拒絶した」と説明。米中関係には改善の動きも出ていたが、冷や水を浴びせた格好だ。
オースティン米国防長官と李氏は、6月2~4日にシンガポールで開かれるアジア安全保障会議(通称シャングリラ会合)に出席する。3月に李氏が就任して以来、両氏の会談は実現していない。
ネックとなっているのが、ロシアからの兵器購入を巡り、李氏が2018年に米政府の制裁対象に指定されたことだ。中国外務省の毛寧副報道局長は30日の記者会見で、会談が実現しない原因は米側にあると主張。「米国は間違ったやり方を改め、対話に必要な機運と条件をつくり出すべきだ」と述べ、譲歩を迫った。
中国が求める制裁解除に米側が応じるという観測もあったが、米側は中国の要求を拒否する態度を明確にした。米国防総省のライダー報道官は声明で「李氏への制裁は、オースティン長官が公務で李氏と会談することを妨げるものではない」と強調。制裁を維持したまま会談を行う方針を示した。
米中関係は、2月に中国の偵察気球が米本土上空を横断し、米軍が撃墜したことで一段と悪化した。一時、対話が途絶えたが、今月に入ってサリバン米大統領補佐官(国家安全保障担当)と中国外交トップの王毅・共産党政治局員がウィーンで会談。25日にはレモンド米商務長官と中国の王文濤商務相がワシントンで会談するなど、互いに歩み寄るムードが出ていた。
中国側も、米国との緊張の激化を避けたいのが本音だ。今月下旬には、4カ月以上空席だった駐米大使として米国通の謝鋒氏が着任。米国との関係修復を狙った人事との見立てもある。
ただ、軍首脳部メンバーである李氏への制裁が続いたままでは中国の体面は保てない。共産党機関紙系の環球時報は24日付の社説で、「中米関係の『雪解け』は歓迎だが、米国は誠実になるべきだ」と主張。緊張緩和に向けて、米側に「誠意」を行動で示すよう求めた。