大久保被告、安楽死に多大な関心 報酬受領の山本被告「早く動かねば」―検察側冒頭陳述・ALS嘱託殺人
2023年05月30日07時34分
筋萎縮性側索硬化症(ALS)患者に対する嘱託殺人罪などに問われた元医師山本直樹被告(45)の初公判。検察側は冒頭陳述で、共に起訴された医師大久保愉一被告(45)が、安楽死や誰にも知られずに人を殺害する方法に大きな関心を抱き、本も執筆していたと指摘。山本被告は患者女性から報酬を受け取ると、「早期に動かねば」と大久保被告に伝えるなど、積極的に加担していたとした。
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冒頭陳述によると、両被告は大学時代に知り合い、医師になってからも親密な関係を続けていた。大久保被告は以前から安楽死だけでなく、捜査機関に発覚しないで人を殺害する方法に関心を寄せ、「医療に紛れて殺害マニュアル」と題した本も執筆。山本被告は本の電子データを受け取るなどしたことで、大久保被告のこうした傾向を認識していた。
大久保被告は2018年12月以降、安楽死を望むALS患者の被害女性=当時(51)=のツイッターの投稿に、共感を示す書き込みをした。やりとりを重ねた後、19年10月には山本被告の名前を使って「安楽死の手伝いができる」と伝え、病死に見せ掛けて殺害するため、薬物を投与する計画も知らせた。やりとりのメッセージの消去を女性に指示する一方、自身が経営する医院名義で薬物を取り寄せるなどした。
女性から報酬が支払われることが決まると、大久保被告は山本被告に銀行の口座番号を尋ね、入金があることをメールで伝達。「1時間で終わる仕事」とも説明した。山本被告は自身の口座に計130万円が入金されると「早期に動かなければならない仕事だと自覚した」と大久保被告に伝え、両被告は1週間程度で計画を練り上げた。
19年11月30日、両被告は友人を装い、京都市にある女性のワンルームマンションを訪問。女性から虚偽の説明を受けていた介護士が寝室に通したことで、女性と3人だけの状況が生まれた。
大久保被告が女性の胃ろうに鎮静薬を注入している間、山本被告は寝室のドア前で見張り役に徹した。台所にいる介護士の行動を監視し、入室しようとすると阻止した。両被告がマンションから退室したのは入室から20分足らずの午後5時38分。間もなく介護士が容体の急変した女性を発見し、救急搬送先の病院で死亡が確認された。