北朝鮮、事前通告で正当化 「軍事偵察衛星」打ち上げか
2023年05月30日07時32分
【ソウル時事】北朝鮮が29日に発射を通告した「人工衛星」は、打ち上げ準備を予告していた「軍事偵察衛星1号機」を指すとみられる。事実上の弾道ミサイル発射に相当し、国連安全保障理事会決議違反とされる。事前通告を行い、国際ルールに従っている姿勢を見せることで、ミサイル開発を正当化しているもようだ。
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朝鮮中央通信によると、金正恩朝鮮労働党総書記は16日、軍事偵察衛星1号機を視察し、「行動計画」を承認した。計画の内容は明らかではないが、北西部・東倉里の「西海衛星発射場」では最近、打ち上げ準備とみられる工事の動きが活発になっている。
偵察衛星の運用は、2021年1月の党大会で決定された国防力発展の5カ年計画に盛り込まれた。将来的に衛星で米韓の動きを察知し、先制攻撃を可能にすることを目指しているとの見方もある。ただ、韓国の聯合ニュースは「(今回衛星打ち上げに成功しても)性能は初歩的」という指摘が多いと伝えている。
北朝鮮は昨年12月、同発射場で偵察衛星の開発に向けた最終段階の試験を実施。その際、今年4月までに1号機の準備を終えると予告していた。今回の通告により、計画に沿って着々と開発を進める姿勢を改めて鮮明にした形だ。
北朝鮮はこれまでも「衛星」と称し、事実上の長距離弾道ミサイルを発射してきた。北朝鮮が「衛星」と称して打ち上げれば、2016年2月の「光明星4号」以来。偵察衛星は初めてとなる。
北朝鮮は6月上旬、朝鮮労働党や政府の重要方針を決める中央委員会第8期第8回総会を招集する。韓国の梁茂進・北韓大学院大教授は、衛星打ち上げに続けて総会を開き、その後、朝鮮戦争の休戦協定締結から70年を迎える7月27日に軍事パレードを開くと予測。重要行事を続けて行うことで、「対内的な体制結束と対外的な存在感誇示」を図ろうとしていると分析している。