念願タッグで栄誉 坂元さんと是枝監督―カンヌ映画祭
2023年05月29日07時01分
カンヌ国際映画祭の常連として注目を集め続ける是枝裕和監督は、新作「怪物」で人気脚本家の坂元裕二さんを起用した。是枝監督が他者の脚本でメガホンを取るのは長編デビュー作「幻の光」以来28年ぶり。「自分が書いていいのだろうか」。当初は不安だったという坂元さんは見事に期待に応えた。是枝監督の念願で実現したタッグで作品が生まれ、脚本賞の栄誉につながった。
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坂元さんは、1991年にフジテレビ系の月曜9時枠で放送された大ヒットドラマ「東京ラブストーリー」の脚本を手がけた。「『月9』に鍛えられて育った脚本家」と自負し、その後も「カルテット」(TBS系)、「大豆田とわ子と三人の元夫」(フジ系)などの話題作を送り出した。
是枝監督は坂元さんが生み出す世界観や人物を見て、「僕には書けない」と憧れを持ち続けてきた。「自分が書かないなら坂元さんにお願いしたい」と本人に伝えていた中で、映画プロデューサーから企画を提案され、坂元さんのプロット(筋書き)を読む前に参加を決めた。
「怪物」の物語の一部は、坂元さんの子どもの頃の体験が基になったという。母親と教師、子どもたちの異なる視点から展開する構成が新しく、コロナ禍で増幅した「信じたいものだけを信じる」ような風潮の中で、怪物とは何かを問う骨太の物語が目を引く。「面白く勉強になる機会だった」。日常を切り取る作風が多かった是枝監督にとっては、大きな刺激を得られた一作となった。