衆院解散・連立基盤に影響も 自公に亀裂、募る不信感―選挙区協議、着地点見えず
2023年05月25日20時38分
自民、公明両党の関係に亀裂が入った。衆院小選挙区「10増10減」を受けた調整で、自民は東京28区で独自候補を立てたいとする公明の要求を拒否。反発する公明は、都内の自民候補の推薦を全て見送ると通告した。自民内では連立政権が揺らぐとの懸念が漏れ、岸田文雄首相(党総裁)の衆院解散戦略にも影響しかねない。
「当落線上」議員に動揺 自民、交渉継続に期待の声―公明、東京の協力解消譲らず
◇「信頼は地に落ちた」
「東京での信頼関係は地に落ちた」。公明の石井啓一幹事長は25日、自民の茂木敏充幹事長に国会内でこう語り、衆院選をはじめ、都内の国政・地方選挙での協力を解消すると明言した。茂木氏は「持ち帰る」と協議継続の意向を示したが、石井氏は「最終的な方針だ」と言い切った。
公明の強硬姿勢の背景にあるのは、日本維新の会の台頭への危機感だ。4月の統一地方選で伸長した維新は、大阪府と兵庫県での公明との選挙区すみ分けを白紙化。公明が議席を持つ6選挙区で対抗馬擁立を辞さない構えだ。
公明や支持母体・創価学会の切迫感は増す。関西での「議席減」を見越し、小選挙区が増える東京などで新たな地盤を確保したい考え。自民の地元支部の了解を待たず、東京29区、埼玉14区、愛知16区で独自候補擁立を発表し、先手を打った後、東京28区も譲るよう「最後通告」を突きつけた。
自民内ではもともと「『10減』で割を食うのはもっぱら自民」(幹部)と不満があったが、公明が自民推薦見送りをちらつかせると「脅しだ」(閣僚経験者)と反発が増幅。東京28区で要求を拒んだ理由に関し、自民関係者は「公明の思うようにはさせない」と説明した。
◇内幕を暴露
公明も不信感を募らせる。衆院選を巡る自公交渉について、これまで公明幹部は口をつぐんできたが、西田実仁選対委員長は24日の記者会見で「経緯もできる限り答えたい」として「内幕」の一端を明らかにした。「混乱の責任を一方的に背負わされかねない」(関係者)と懸念したためだ。
西田氏によると、今年2月、自民側は4月の衆院千葉5区補欠選挙で公明の支援を得られれば、東京28区の公明擁立に「最大限努力する」と約束。しかし、今月23日になって「都連が候補者を決めており、受け入れは困難」と伝えてきた。
東京29区を巡っても、自民執行部は1月、「地元に反発があっても説得する」と公明に伝達。この約束も果たされず、自民都連の高島直樹幹事長が公明候補に「党本部の推薦が出ても、地元の自民は応援しない」と言い放ったという。
西田氏は会見で「誠実な協議とは言えない」と批判した。
◇「利害関係のみ」
自公連立政権は1999年に発足したが、きしみが目立つ。昨夏の参院選では「相互推薦」を巡る協議がもつれ、最後は党首会談で合意に道筋を付けた。公明ベテランは「人間関係が希薄になったことが根本的な原因だ。あるのは利害関係だけだ」と嘆いた。公明・創価学会と太いパイプを持つ自民の菅義偉前首相ら両党重鎮が非主流派となったり、政界を引退したりしたことが響く。
自民内では「公明推薦がなければ衆院選候補の半分が落選する」(ベテラン)ともささやかれる。自公幹事長は30日に再び会談するが、着地点は見えない。閣僚経験者は「こじれれば連立解消のリスクもある」と危惧する。内閣支持率上昇を受けて自民内では早期の衆院解散を望む声もあるものの、党幹部の一人は「これだけごたつくと衆院解散は遠のくのではないか」と語った。