インド、「第三極」の存在感誇示 ゼレンスキー氏と初会談も―モディ氏、日・オセアニア歴訪
2023年05月26日07時07分
【ニューデリー時事】インドのモディ首相は25日、日本を含む3カ国歴訪から帰国した。外遊中、米欧日やロシア・中国の双方と距離を置く「第三極」の代表格として存在感を発揮。ロシアによるウクライナ侵攻後初となるゼレンスキー大統領との対面会談も注目を集めた。
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◇ウクライナ側が要望
モディ氏は先進7カ国首脳会議(G7広島サミット)の拡大会合に招かれ、19日に広島入り。翌20日、ゼレンスキー氏と会談した。会談は「ゼレンスキー氏が求めた」(インド外務次官)といい、モディ氏に首都キーウ(キエフ)訪問を打診したという。
インドは対ロ制裁に加わらず、侵攻に中立的な姿勢を保っている。ウクライナにとってはインドに翻意を促すとともに、インドを含む「グローバルサウス」と呼ばれる新興・途上国との連携を示す上でも重要だった。
会談でモディ氏は「事態解決のため個人的にできることは何でもする」と強調。医薬品など人道物資の提供を続けるとし、対話と外交による解決を改めて訴えたが、徹底抗戦を貫くゼレンスキー氏との温度差は否めなかった。
インドは西側の制裁をよそにロシア産原油を買い支えるなど、ロシアとの結び付きは依然強い。外交方針を大きく転換する可能性は低いとみられている。
広島市によると、インド首相の広島訪問は1957年の初代首相ネール以来で、インド初の核実験を実施した74年以降は初めて。モディ氏は事実上の核保有国のトップとして、他の首脳と共に平和記念資料館(原爆資料館)を視察した。
◇背景に対中国
日本訪問後は南太平洋のパプアニューギニアとオーストラリアを訪れた。バイデン米大統領が国内の債務問題のあおりでオセアニア歴訪を見送った中、同地域を重視する姿勢をアピールした。
パプアでは14の太平洋島しょ国首脳との会議を共催。医療環境改善のためインド政府が費用負担する病院の建設や、水不足解消を目的に海水淡水化装置の提供も約束した。この地域で影響力を強める中国に対抗し、支援をてこに浸透を図った形だ。
豪印首脳会談では貿易や重要鉱物の分野で協力拡大を協議。豪印は日米を含めた4カ国の枠組み「クアッド」で協調しており、中国の経済的威圧に対抗するため連携強化を進める。
アルバニージー豪首相は、シドニーで開かれた歓迎集会でモディ氏を「ボス(親分)」と呼び、集まった2万人以上を沸かせた。豪州ではインド系移民が急増しており、影響力が増してきたことを示す出来事だった。