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被爆地開催、サプライズで結実 岸田首相、対ロ結束の成果誇示―新興国取り込みに奔走・G7サミット

2023年05月21日21時49分

先進7カ国首脳会議(G7サミット)の討議に先立ち、記念撮影を終えて移動する(左から)ショルツ独首相、バイデン米大統領、岸田文雄首相、ウクライナのゼレンスキー大統領、マクロン仏大統領=21日午前、広島市南区のグランドプリンスホテル広島(代表撮影)

先進7カ国首脳会議(G7サミット)の討議に先立ち、記念撮影を終えて移動する(左から)ショルツ独首相、バイデン米大統領、岸田文雄首相、ウクライナのゼレンスキー大統領、マクロン仏大統領=21日午前、広島市南区のグランドプリンスホテル広島(代表撮影)

  • 岸田文雄首相(右)の発言を聞くウクライナのゼレンスキー大統領(左手前から3人目)、インドのモディ首相(同2人目)、韓国の尹錫悦大統領(同4人目)=21日午後、広島市南区(代表撮影)

 被爆地・広島での先進7カ国首脳会議(G7サミット)は、ロシアのウクライナ侵攻に対するG7の結束を強く打ち出した。ウクライナのゼレンスキー大統領の電撃的な来日は、世界的にも大きなインパクトを与え、議長役の岸田文雄首相は成果を誇示。「グローバルサウス」と呼ばれる新興・途上国の取り込みにも奔走した。
 ◇空気一変
 「国民の先頭に立ってロシアに立ち向かうゼレンスキー大統領にも議論に参加してもらい、メッセージをより力強く国際社会に発信することができた」。首相は21日、サミット閉幕を受けて広島市の平和記念公園で記者会見し、こう手応えを口にした。
 ウクライナ危機への対応は、当初から中心テーマだった。それでも、オンライン形式で参加予定だったゼレンスキー氏が、実際に広島を訪問したことで、サミットを取り巻く空気は一変。最終日は「ウクライナ一色」となった。
 一連の討議で、首相は「法の支配に基づく国際秩序」の維持・強化を繰り返し主張。中国の覇権主義的な動きとも重ね合わせ、G7の合意形成に腐心した。

 首相側には、ライフワークとする「核兵器のない世界」実現へ、ゼレンスキー氏の登場を追い風としたい思惑もにじむ。ロシアによる核兵器使用の威嚇に直面する当事者が主張すれば、より説得力が増すとみているためだ。
 ゼレンスキー氏は21日、平和記念資料館(原爆資料館)を視察。両首脳はそろって原爆死没者慰霊碑に献花した。
 「核兵器のない世界に向けて取り組む上で、大変重要な意義を有する」。首相はその後の首脳会談の席上、ゼレンスキー氏に「ウォロディミル」とファーストネームで呼び掛けるなど、緊密な連携をアピールした。
 ◇「お膳立て」
 米欧と中ロの双方から距離を置くグローバルサウスとの連携強化も焦点だった。代表格のインドをはじめ、日本政府が今回のサミットに招待した8カ国のうち、6カ国がこうした国々だ。
 首相には、ウクライナ危機への対応を巡りゼレンスキー氏から直接、新興・途上国に主張を伝えてもらう狙いもあった。
 実際、招待国首脳が顔をそろえた拡大会合は、1時間の予定を30分以上オーバー。複数のG7関係者は「ウクライナとグローバルサウスの接点をお膳立てすることが重要な目的だった」と明かした。
 ゼレンスキー氏側の要請を受け、水面下で来日を調整した日本政府。G7メンバーの協力も得て、警備体制や移動手段を整えた。「大過なく終わって良かった」。サミット閉幕を見届け、関係者は胸をなで下ろした。
 ◇強まる解散観測
 G7の対ロ結束、「核なき世界」の発信に、ゼレンスキー氏の来日という「サプライズ」も加わり、自民党内からは政権浮揚を期待する声が上がる。閣僚経験者の一人は「内閣支持率は相当上昇するだろう」と指摘。早期の衆院解散・総選挙も「あり得る」との見方を示した。
 そもそも、サミットの「成果」をアピールして解散に踏み切るとの観測は、開催前から取り沙汰されていた。首相自身は21日の会見で「今は考えていない」と重ねて否定。これに対し、野党関係者は「これ以上のタイミングはない」と警戒感を隠さなかった。

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