尹政権、「過去を直視」アピール 未来志向の日韓関係と並行
2023年05月22日07時08分
岸田文雄首相と共に21日、広島市の韓国人原爆犠牲者慰霊碑を訪れた韓国の尹錫悦大統領は、神妙な面持ちで花を手向けた。韓国大統領の慰霊碑訪問は初めて。野党が歴史問題を巡り批判を強める中、未来志向の日韓関係に進むと共に「過去を直視する」姿勢を見せた。
「同胞の皆さんが苦難と苦痛を受けているのに、政府や国家は皆さんの側にいられなかった」。19日、在日韓国人被爆者との面会の場で、尹氏は深く謝罪。「大統領の慰霊碑参拝が遅すぎた」ともわびた。
慰霊碑訪問に立ち会った在日韓国人被爆者の朴南珠さん(90)は、「長生きしていたら、こんなに良いこともあるんだ」と歓迎した。
韓国大統領府の李度運報道官は、慰霊碑訪問の意義を「(日韓)両首脳がつらい過去を直視し、治癒のために努力することを示した」と説明。韓国政府関係者は「これまでは歴史の問題を言葉で解決しようとしてきたが、今回は(行動で解決を)実践した」と強調する。
今回の慰霊碑訪問は、7日にソウルで行われた日韓首脳会談で岸田氏が提案したものだった。岸田氏は会談で、元徴用工問題に関し「心が痛む」と表明。3月に元徴用工問題の解決策を発表して以降、革新系野党などから「屈辱外交だ」と批判を受けてきた尹氏に、岸田氏が「助け船」を出した形となった。
世論調査機関「韓国ギャラップ」が今月19日に発表した調査結果によると、尹氏の支持率は37%で、ソウルでの首脳会談前に比べ4ポイント上昇。韓国政府関係者は「対日関係がマイナス要因にならなかった」と胸をなで下ろし、慰霊碑訪問について「歴代の革新系大統領が訪問しなかったことを批判される可能性もあり、野党は批判しにくい」と解説した。
革新系最大野党「共に民主党」は21日の声明で「慰霊碑参拝自体は意味がある」と珍しく評価。一方で「尹氏が岸田氏の参謀のように見える」と皮肉った。