在日韓国人被爆者「核なき世界の一歩に」 日韓首脳の慰霊碑訪問歓迎―広島サミット
2023年05月19日13時31分
先進7カ国首脳会議(G7サミット)に参加するため19日から来日する韓国の尹錫悦大統領は、岸田文雄首相と共に広島市の平和記念公園にある韓国人原爆犠牲者慰霊碑を訪問する。韓国大統領が訪れるのは初めて。在日本大韓民国民団(民団)広島県地方本部の権俊五さん(73)は「核のない世界に向けた第一歩になってほしい」と期待する。
「証言続ける姿に刺激」 広島で遺構紹介11年―被爆2世の多賀俊介さん
尹氏は19日夕、広島市で、韓国大統領として初めて在日韓国人の被爆者と面会する。権さんは、広島で被爆した親を持つ被爆2世で、同本部の韓国原爆被害者対策特別委員会委員長を務める。「被爆者が長く願ってきた(大統領の)訪問で、うれしい」と歓迎する。
今懸念しているのは、韓国で核保有論が高まっていることだ。北朝鮮の核開発に対抗するため、韓国では7割が核保有に賛成するとの世論調査結果もある。権さんは「被爆者として、在日韓国人として二重の(差別の)苦しみを受け、頑張ってきて今がある」と強調。「大統領には被爆者の証言を聞き、韓国の若い人たちに被爆の実態を知らせてほしい」と語った。
また、ウクライナ侵攻を続けるロシアが核兵器の使用を示唆したことも危惧している。「広島の原爆1発でどれだけの人たちが死に、後遺症に苦しんでいるか。街と家族の歴史が無くなってしまった」と核兵器のもたらす惨状を訴える。
慰霊碑には、原爆で亡くなった朝鮮半島出身者は2万人余りと記されている。近くには、氏名不詳だったり一家が全滅したりして引き取り手のない遺骨の供養塔もある。「家族を捜しに来ても捜せない人がいた。一瞬にしてどこの誰かも分からなくなった」。権さんは世界の指導者に対し、核ではなく、話し合いでの問題解決を強く求めている。