「サミット前」に岸田首相固執 LGBT法案、超党派合意破綻
2023年05月19日07時09分
自民、公明両党は18日、LGBTなど性的少数者への理解増進法案の修正案を衆院に提出した。19~21日の先進7カ国首脳会議(G7広島サミット)の開幕前日で、岸田文雄首相(自民党総裁)が固執した「サミット前」に何とか間に合わせた形だ。しかし、反発する立憲民主党などは修正前の原案を提出。超党派合意の破綻が決定的となり、国会審議の行方は見通せない。
「与党案はきょうにも国会に提出される。引き続き注視したい」。首相は18日、広島に出発する直前、首相官邸で記者団に満足げに語った。
超党派の議員連盟が2021年に法案をまとめたのは、幅広い与野党合意の下での制定が望ましいとの判断からだった。にもかかわらず、自民党は与党単独の提出に踏み切った。「首相がサミット前に政権の姿勢を国際社会に示すことにこだわった」(党関係者)からだ。
議連の法案は自民党保守派の抵抗で国会提出に至らなかった。しかし、今年2月に性的少数者に対する首相秘書官(当時)の差別発言が問題化し、政府・自民党に批判の目が向けられると、首相は党内論議再開を指示した。
国際社会の動きも首相をせき立てた。国連人権理事会は2月、同性婚の法整備勧告を含む審査報告書を採択。G7の駐日大使らは性的少数者の権利保護を促す首相宛ての書簡をまとめた。これを受け、首相は「サミットで説明できるようにしてほしい」と水面下で党に迫ったという。
ただ、首相と党執行部が合意形成に腐心したとは言い難い。党内対立の激化が影響することを恐れ、党内論議の再開は4月の統一地方選後。党内保守派の意向を踏まえ、議連の法案を修正したが、議論の時間は十分とは言えず、12日の合同会議では反対論が消えない中で一任取り付けを宣言した。
自民党が日本維新の会と国民民主党に共同提出を呼び掛けたのは提出前日の17日で、立民の部門会議で修正案を説明したのは18日だった。
自民党保守派からは「国会で造反も辞さない」との声が漏れる。党執行部が期待する維新や国民の賛同も今のところ得られず、修正案成立への道筋は見えない。自民党関係者は「サミットが終われば成果を急ぐ必要はない。数年かけて議論すればいい」と語った。