成長持続に不透明感 輸出に急ブレーキ―3期ぶりプラスも・1~3月期GDP
2023年05月17日20時32分
2023年1~3月期の国内総生産(GDP、実質)は、サービス消費を中心とした内需の回復に支えられ、3期ぶりにプラス成長となった。新型コロナウイルスの感染症法上の位置付けが「5類」に移行し、社会や経済の正常化が進む中、関連する旅行業界などは一段の需要拡大に期待する。一方、海外経済の減速を背景に輸出には急ブレーキがかかっており、成長持続には不透明感が漂う。
◇5類移行で観光「復活」
コロナの影響が和らいだ今年4、5月の大型連休。東京・浅草や京都などの観光地は多くの人出でにぎわった。JR旅客6社によると、期間中の新幹線などの利用実績は約1100万人に上り、コロナ前の18年の94%まで回復。日本航空の国内線搭乗者数は18年実績を上回った。
山形県米沢市でも、名物の「上杉まつり」がコロナ後では初めて完全な形で開催された。県観光物産協会の安孫子義浩参与は「(人出はコロナ前の)8~9割まで戻っている」と指摘。今月8日のコロナ「5類」移行を機に、「県内観光を復活させたい」と意気込む。
マスク着用が任意になるなど規制が緩和される中、1~3月期の個人消費は4期連続でプラスとなった。第一生命経済研究所の熊野英生首席エコノミストは、5類移行に伴う消費拡大などの経済効果は、インバウンド(訪日外国人)の増加と合わせて4.2兆円、実質GDPに換算すると0.75%の押し上げ効果になると試算する。
◇6期ぶりマイナス転落
一方、海外経済の減速も鮮明になっている。インフレ抑制に向けた米欧の利上げを背景に、半導体製造装置や自動車などの需要が減少。1~3月期の輸出は6期ぶりのマイナスに転落した。米国の銀行破綻に端を発した金融不安がくすぶり続け、新たに米政府の「債務上限」問題も浮上。デフォルト(債務不履行)に陥れば、世界経済への打撃は避けられない。
国内企業トップからも懸念の声が相次ぐ。ソニーグループの十時裕樹社長は4月下旬の決算説明会で、「先進国では欧州の減速が顕著になるのではないか。中国も不透明感が高い」と指摘。信越化学工業の斉藤恭彦社長も「逆風が今後強まると見込まれる」と、警戒感を隠さない。
三菱UFJリサーチ&コンサルティングの小林真一郎主席研究員は先行きについて、「海外経済減速リスクは残り、今後も輸出の低迷は続く」との見方を示している。