欧州、規制案で先行 日米は技術革新に配慮―生成AI対応
2023年05月18日07時06分
【シリコンバレー時事】先進7カ国首脳会議(G7広島サミット)参加国では、入力した情報に基づいて文章や画像を作り出す生成AI(人工知能)への規制を巡る足並みはそろっていない。欧州が先行して法制化に動いている一方、日米は技術革新への配慮を重視し、ガイドライン(指針)よりも柔軟な対応を模索している。
生成AI活用へ「広島プロセス」 国際ルールに道筋―G7サミット
欧州連合(EU)欧州議会の委員会は11日、AI規制案を賛成多数で承認した。AI利用に関する包括的な規制を目指したものとしては主要国・地域で初めてとなる。6月に本会議で採決し、加盟各国と詳細を調整した上で、2024年以降の施行を想定している。
当初案には生成AIへの言及はほとんどなかった。しかし、米新興企業オープンAIが手がける対話型AI「チャットGPT」への注目が高まったことを受け、生成AIのリスクも考慮。知的財産や個人情報の保護などで透明性を高める規定を新たに盛り込んだ。担当者は「EUが人間中心のAIへと導くことができる」と語る。
規制案は、生成AIの基盤技術に学習させた著作物について、概要の開示を義務付け。AIによって作られたコンテンツの明示も求める。EUが設けるデータベースへの登録やリスクの記載も必要で、データベースは一般公開される。AI開発企業にとって、厳格な規制は負担となりそうだ。
一方、米政府は「開発企業が安全確認の責任を負う」との考え方を明確にしている。システムの安全性や差別防止といったAI開発で守るべき原則や、リスク管理の手順書を公表。いずれも法的拘束力はなく、開発企業に自発的な取り組みを促すことで、技術革新を後押しする姿勢だ。
日本政府は11日に「AI戦略会議」の初会合を開き、議論がスタートした。著作権やプライバシーの侵害、誤情報の拡散といった懸念に対処しつつ、生産性の向上に生かせるよう道筋を付けたい考えだ。